キトロロギストXの記録
激しく変化する昨今のもとで一生をカンキツ研究に捧げてきた老学者の独白を広く一般のカンキツ愛好家(キトロロマニア)に聞いていただきたくブログを開設しました。お閑な時にどうぞ目を通してください。
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無核紀州の果実側壁膜の硬さを測る
komikan果実

 紀州蜜柑は、紀元前に中国ですでに知られていた、古い種類の小蜜柑です(以前記事;なつかしい小蜜柑、10/01/06)。日本には、紀元5世紀ごろに渡来し、ウンシュウミカンが広く知られるようになった明治までの、とくに、江戸時代の剥皮性で甘味のあるみかんの代表品種でした。日本の風土によく適応していましたので、栽培面積の拡大した過程で、いろいろな枝変わり突然変異をみせました。今回それらの中の種無しの無核紀州の果実が手に入りましたので、側壁膜の硬度の測定と解剖を試みました。

komikan硬度

1)側壁膜の硬度
 果重35g程度の果実が10袋をもっていました。側壁膜の硬度は、1㎏から3㎏程度あり、平均硬度は2.2㎏でした。硬度1㎏の袋ごと食べられるウンシュウミカンには及ばず、袋ごとは食べにくい果実でした。しかし、往時は、果肉丸ごと呑み込んでいたことでしょう。
 
komikan形質相
komikan相関

2) 側壁膜の硬度と果実形質との相関
 側壁膜は、果実の形質の一つですので、その他の形質との相関係数を求めてみました。その結果、袋重を除いて、硬度と、果重、果形、果皮重、果肉重、室数、などの形質との間には、高い相関関係はみられませんでした。しかし、膜の硬度は、袋重や果汁の糖度とプラスの有意な相関関係をみせました。

komikan解剖
komikan棒細胞

3)側壁膜の硬度と側壁膜組織構造との相関
 側壁膜はこれまでと同様にすべて棒状細胞で構成されていました。そこで、側壁膜の硬度と、側壁膜の厚さ、あるいは棒状細胞の幅との相関係数を求めてみましたところ、側壁膜の硬度は側壁膜の厚さ、棒状細胞の幅いずれとも弱い正の相関関係にありました。無核紀州の側壁膜は平均で227μmと厚く、さらに、平均幅として14μmの棒状細胞で、細い細胞からなる組織構成となっていて、このことが、高い硬度を示したといえそうでした。

 最近の研究で、紀州蜜柑が温州蜜柑の母親であったことが分かってきました。とても長い歴史を持つ紀州蜜柑が、薩摩の長島(以前は肥後)で、より優れた温州蜜柑を誕生させたということになりました。両品種の側壁膜の硬さの相違は、果実の大きさの革新とともに、食感改善にこだわってきた日本人の歴史を物語っているようです。
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普通温州の果実側壁膜の硬さを測る
koudo-f-果実

 12月に入って、普通温州が出回るようになりました。普通温州でも、早生温州と同様に、袋ごと食べられるミカンの販売にこぎつけていたか、側壁膜の硬度を測定しました。 

koudo-f硬度

1)側壁膜の硬度の産地間差
 市販のウンシュウミカンの愛媛産A、愛媛産B、愛媛産C,和歌山産、東京産の果実を使って、それぞれの側壁膜の硬度を果実硬度計で測定しました。硬度計は5mm径の圧子(プランジャー)を用い、取り出した袋の側壁膜の中央部を挿して、貫通時の数値を得て、比較しました。その結果、銘柄産地の果実の多くが、1-2㎏の硬度をみせたのに対して、東京産の果実の多くが2-3㎏のより高い硬度を示しました。中には、6㎏を超える硬い側壁膜の果実がありました。全体的に、普通温州は、1㎏を下回る果実の割合が、早生温州よりより低いものでした。

koudo-f形質相関

2) 側壁膜の硬度と果実形質との相関
 側壁膜は、果実の形質の一つですので、その他の形質との相関係数を求めてみました。その結果、早生温州と同様に、硬度と、果重、果形、果皮重、果肉重、室数、袋重などの形質との間には、高い相関関係はみられませんでした。膜の硬度は、果実の室数とやや相関関係をみせました。

koudo-f側膜
koudo-f解剖形質

3)側壁膜の硬度と側壁膜組織構造との相関
 側壁膜の硬さは、構成細胞の棒状細胞層の厚さや細胞膜の強固さ、さらには、細胞同士の接着の強さに左右されているものと思われます。そこで、側壁膜の硬度と、側壁膜の厚さ、あるいは棒状細胞の幅との相関係数を求めてみましたところ、側壁膜の硬度は側壁膜の厚さと正の相関関係にあり、また、棒状細胞の幅とは負の相関関係にありました。このことから、普通温州では、側壁膜が厚く、さらに、棒状細胞が細い組織構成の状態が、高い硬度を示したといえそうでした。

koudof真穴みかん膜厚

 平成28年度は、みかんの裏年にあたっていて、さらに、秋口に雨量がおおく、晴天に恵まれませんでしたので、低糖度の果実になったものと思われます。一般には、甘い高い糖度の果実の袋膜は、柔らかいと思われていますので、側壁膜の硬度と糖度の相関関係をみましたところ、ケースバイケースで、大きくみると関係がないのではないかと思われました。

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紅まどんなの果実側壁膜の硬さを測る
benimado紅まどんな生産

 12月に入って、普通温州と出荷期を共にできる愛媛の特産カンキツの紅まどんなが、店頭にみられるようになりました。紅まどんなの栽培熱は高く、1500トンを超える集荷量になってきました。栽培方法も、屋根かけ法に加えて、ハウス栽培もみられるようになり、11月期の前進販売もみられそうです。剥皮が容易で、袋ごと食べられるこの品種の側壁膜の特徴を、調べてみました。

benimado硬度比較

1)側壁膜の硬度の差異 
 12月初旬の市販の紅まどんなの果実側壁膜の硬度は、0.8㎏/cm2から2㎏の範囲にありました。袋ごと食べられた早生温州と同程度の果実が、3分の1ほどみられました。硬度はともかく、私見として、ほとんどの果実が、袋ごと食べられる膜の硬さを示しました。

benimado相関図

2) 側壁膜の硬度と果実形質との相関
 側壁膜の硬度と、果実の形質との関係をみるために、相関係数を求めてみました。その結果、硬度は、果重、果形、果皮重、果肉重、室数、袋重などの諸形質との間に、有意な相関関係を持ちませんでした。大きくは、いずれもマイナス相関の関係にありましが、膜の硬度と果肉の糖度との間は、プラスの相関関係をみせました。

benimado棒細胞
benimado解剖比較

3)側壁膜の硬度と側壁膜組織構造との相関
 側壁膜の硬さは、構成細胞の棒状細胞の厚さや強さ、さらには、細胞同士の接着の強さに左右されているものと思われます。そこで、果実の大きさの違いで、硬度、棒状細胞の幅、側壁膜の厚さがどのように違うか、比較してみました。その結果、大果ほど硬度は低く、さらに棒状細胞の幅は小さいことを知りました。また、側壁膜の厚さとは、正の相関関係にあり、大果ほど厚い膜となっていました。紅まどんなでは、側壁膜の構成細胞数の多いことが、高い硬度を示したといえそうでした。

benimado隔膜膜

 食感としての食べ物の硬さは、なかなか複雑で、口内での砕け易さ、粘着性、喉ごし性など、異なった視点からの検討が必要でしょう。そのため、側壁膜の硬さを、硬度計の測定値がすべて示しているとは言い切れませんが、紅まどんなでも、袋ごと食べれるミカンと同様に、測定値1kg以下の硬度が、可食袋膜の示度といえるようでした。
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早生温州の果実側壁膜の硬さを測る
koudou果実

  ウンシュウミカン(ミカン)のおいしい季節になりました。皮をむいて食べようとして、袋ごと食べられるミカンにあたりますと、おいしさはさらに倍増します。袋ごと食べれるミカンの側壁膜の硬さとは、どの程度の硬度なのか、その特徴を調べてみました。

koudouゆら早生
koudou産地

1)側壁膜の硬度の産地・系統間差
 市販のハウスミカン、有田の早生、宇和の早生、真穴の早生、佐賀の早生、東京の早生を使って、それぞれの側壁膜の硬度を果実硬度計で測定しました。硬度計は5mm径の圧子(プランジャー)を用い、取り出した袋の側壁膜の中央部を挿して、貫通時の数値を得て、比較しました。その結果、袋ごと食べられたハウスミカンと早生温州は、硬度が1㎏以下で、とても柔らかい口あたりでした。全体的に、早生温州の側壁膜の硬さは、3㎏以下にありました。

koudou相関

2) 側壁膜の硬度と果実形質との相関
 側壁膜は、果実の形質の一つですので、その他の形質との相関係数を求めてみました。その結果、硬度は、果重、果形、果皮重、果肉重、室数、袋重などの諸形質との間に、高い相関関係を持ちませんでした。しかし、大きくは、いずれもマイナス相関の関係にありました。また、膜の硬度と果肉の糖度との間にも、相関関係はみられませんでした。

koudou解剖符合2

3)側壁膜の硬度と側壁膜組織構造との相関
 側壁膜の硬さは、構成細胞の棒状細胞の厚さや強さ、さらには、細胞同士の接着の強さに左右されているものと思われます。そこで、硬度と先の解剖所見の側壁膜の厚さ、あるいは棒状細胞の幅との相関関係を求めてみました。その結果、硬度と側壁膜の厚さが正の相関関係にあり、また、棒状細胞の幅とは負の相関関係にありました。このことから、早生温州では、側壁膜の構成細胞数の多いことが、高い硬度を示したといえそうでした。

 袋ごと食べれるミカンとは、ヒトそれぞれでしょうか。消費者の食行動を規定することは、どの生鮮食品をとってもとても難しいものです。硬度や成分や組織構造などの測定数値で、袋ごと食べれるミカンを、科学的に明らかにできるといいのですがーーー、とりあえず、早生温州では、硬度1㎏という数値を示唆できました。それにしても、産地間での硬度の違いは、大きいものでした。
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カンキツのペクチン量の相違
pectinペ℃チン粉

 ジャムをつくる人にとって、ペクチンはおなじみの物質でしょう。ペクチンは、ペクチン質に富んだカンキツやリンゴの果実を使って、抽出、生産されています。ペクチン質(pectic substances)は, 水に溶けないプロトペクチンと、これの変換、低分子化した水に溶けるペクチン(正確にはぺクチニン酸)、さらに低分子化した水に溶けないペクチン酸などを含みます。未熟の果実には、ペクチンはほとんどありません。果実の成熟が進むと、ペクチンの量が増大してきて、果実が軟化してきます。

pectinモデル

 したがって、ジャム用のペクチンの生産には、成熟果の果皮や不良果などが用いられてきました。また、純度の高いリンゴのペクチンは、ペクチンが少ない果実(モモ、ビワ、サクランボ、ブドウなど)のジャム補添加用(ゲル化剤)に利用されています。果実のジャムつくりについては、別の話題にします。

 ペクチン質はあらゆる植物にあり、細胞と細胞の間(中葉)で糊のようなつなぎの役目をしています。またさらに、細胞壁のセルロース束(ミクロフイブリル)のネットワークの接着の役目を、ヘミセルロースとともに果たしています。このようなことから、ペクチン質が変性しますと、果肉の硬さが変化し、食感に影響を持ってきます。カンキツのペクチン質についてのこれまでの研究業績は少ないのですが、2,3の知見を紹介します。

pectin品種間

1)ペクチン量の果実種類間差
 一般に、カンキツのペクチン質は果皮に最も多く、普通温州で新鮮重100g中に6g程度、早生温州で4-5g程度含まれていました。これほどの多量成分ですので、カンキツはマンゴーとともに、ペクチン・リッチな果実として分類されています。果肉のベシクル新鮮重100g中には、バレンシアオレンジで0.1g、マーコットマンダリンで0.04g程度あり、その他の種類はこの範囲内にありました。ペクチン量の種類間差は、果実の成熟度と関係していますので、正確ではありませんが、成熟果には、水溶性のペクチンが、ペクチン質の4割から5割程度含まれていました。ペクチン量の種類間差に、分類学的類似性を探しても、はっきりしませんでした。このためにはさらに、データの積み上げが必要でしょう。

pectinエチレン処理
pectinぺcチン
2)エチレン処理によるペクチン質の変性
 カンキツの果肉はエチレンに接触しても硬さがかわりません。緑色果皮は褪せて黄色になるのですが、エチレン感受性のバナナなどのように、エチレンが細胞壁膜のペクチンメチルエステラーゼなどの酵素活性の引き金にならないようです。一般に、果肉軟化では、ペクチニン酸のカルボキシル基が加水分解されて、ペクチン酸が生成しますが、このプロセスはペクチンメチルエステラーゼ酵素(PME)で触媒されています。また、PME をコードしている遺伝子には、いくつかの遺伝子群があり、バナナでは、これらの遺伝子群のうちPME1遺伝子が発現して、ペクチンメチルエステラーゼの活性を促し、ペクチン含量を増大していました(Vermaら、2014)。カンキツ果肉ベシクルでのPME遺伝子発現の多型性についての研究がまたれています。

 カンキツ果肉のベシクルには、0.1%内外の多量のペクチン質があり、食物繊維としての整腸作用や健康増進に、さらには、ゲル化剤として食品工業に貢献しています。カンキツの袋膜には、果肉と同量程度のペクチン質が含まれていると予想されますので、袋ごと食べれるミカンの提供ができると、さらに一段と高いレベルの生鮮食品となることでしょう
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