キトロロギストXの記録
激しく変化する昨今のもとで一生をカンキツ研究に捧げてきた老学者の独白を広く一般のカンキツ愛好家(キトロロマニア)に聞いていただきたくブログを開設しました。お閑な時にどうぞ目を通してください。
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デコポンの果実側壁膜の硬さを測る
dekokaku果実横断
dekokaku収量

 デコポン(不知火)の出荷が、5万トンを超えるようになりました。高い人気のために、確実にマーケット寿命を延ばしています。栽培方法にも、屋根かけ法が定着してきて、ウンシュウミカンの12月期まで、前進販売が進んできました。高品質のこの品種の側壁膜の特徴を、調べてみました。

dekokaku硬度

1)側壁膜の硬度の差異 
 デコポンの果実側壁膜の硬度は、1.3㎏/cm2から2.7㎏の範囲にあり、平均値は2㎏でした。袋ごと食べるにはやや難がありました。側壁膜がとくに基底部で破れやすく、また、融合袋も多くみられました。

dekokaku-形質相関

2) 側壁膜の硬度と果実形質との相関
 側壁膜の硬度と、果実の形質との関係をみるために、相関係数を求めてみました。その結果、硬度は、大きくみて、果重、果形、果皮重、果肉重、室数、袋重などの諸形質との間でプラスの相関関係にあり、とくに、果肉の糖度や油胞数との間に、高いプラスの相関関係がみられました。

dekokaku構造相関
dekokaku-膜細胞幅

3)側壁膜の硬度と側壁膜組織構造との相関
 側壁膜の硬さは、構成細胞の棒状細胞の厚さや強さ、さらには、細胞同士の接着の強さに左右されているものと思われます。そこで、側壁膜の硬度と、棒状細胞の幅、側壁膜の厚さとの関係をみましたところ、硬度は棒状細胞の幅や側壁膜の厚さとに間に、相関関係にないことが分かりました。硬度は、組織構造以外のリグニンなどの沈着物質に関係していることが予想されました。

 食感としての食べ物の硬さは、なかなか複雑で、口内での砕け易さ、粘着性、喉ごし性など、異なった視点からの検討が必要のようです。そのため、側壁膜の硬さを、硬度計の測定値ですべてを表現するには難があります。いろいろの産地のデコポンで、袋ごと食べれる側壁膜を、さらに探してみたいものです。
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カンキツ果実の側壁膜の発育
 袋ごと食べれるカンキツの果実は、袋の膜(segment membrane)が柔らかく、だれでも袋丸ごと嚥下できる食形態でしょう。はたして、カンキツの袋膜が、どのように分化して、発達するのか、その形態形成過程について観察しました。

tomikan2富柑肥大

1)果実の発達
 側壁膜の形態形成は、果実の生長とともに進行しますので、果実の生長のパターンについて、早生性の富柑の幼果から成熟果までの果実を使って観察しました。
 果実は、他のカンキツと同様に、シグモイド曲線(S字曲線)で成長しました。開花後60日までのゆっくりした幼果成長期「第1期」、次いでのち160日までの急速な100日間の果実肥大期「第2期」、さらにのち収穫180日までのゆっくりした生育の20日間の成熟期「第3期」をみせました。

tomikan2容積

 果実は、風船が膨らむように、内部が等しく生育していませんでした。果皮部と果肉部では、ステージごとに真逆な生育がみられました。果皮部は、果実が急速に生育する第2期には、ほとんど容積の増大をみせず、第3期に入って容積の拡大をみせました。この両者の生育パターンの相違は、カンキツ果実の独特の性質でしょう。

tomikan2富柑2

2)側壁膜の分化、発達
 幼果の第1期では、側壁膜は認められず、一枚の隔壁(心皮壁septum)となっていました。その後、6月を過ぎる第2期に入ると、隔壁膜の中央部の細胞層が溶解し(細胞がアポトーシスをみせ)、2枚の側壁膜に分離してきました。種類によって、成熟した果実が、袋離れの良い種類と、難しい種類がありますが、この性質の差は第2期に決定されるものと思われました。側壁膜の厚さは成熟までに徐々に薄くなっていきました。

tomikan2側膜厚発達

3)側壁膜の細胞分化
 幼果の第1期では、隔壁膜は、丸みを帯びた柔細胞で、すべて構成されていました。6月を過ぎる第2期に入ると、側壁膜のすべての細胞が果芯に向かって伸長し、細長い棒状柔細胞に分化しました。そして、細胞自体は各々生育に連れて肥大伸長しました。第2期以降の側壁膜での細胞分裂はみられませんでした。細胞分裂は、第1期までに終了するものと思われました。この点は、先端部で成熟期でも細胞分裂のみられるベシクルとは、異なっていました。

tomikan2細胞

 これらの側壁膜の分化、発達の観察結果から、食べれる袋の開発には、第1期の細胞分裂期の栽培技術(septum control )と、第2期の細胞伸長肥大期の栽培技術(segment control)について、新たな栽培管理の研究を展開する必要性を感じました。
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富柑の果実側壁膜の硬さを測る
tomikan1富果実

 富柑は、ハウスミカン程度の小型の果実で、より甘く、ほとんどの果肉が袋ごと食べられます。11月ごろ成熟する早生のカンキツです。この品種の1本の木から集めた果実について、側壁膜の硬度を測定し、果実の特徴を調べました。

tomikan1硬度

1 )袋の側壁膜の硬度
 富柑の側壁膜の硬度は、0.8㎏から2㎏あり、ほとんどの果実は袋ごと食べられました。1果に1000から2000本ほどあるベシクルも極めて柔らかく、とくに、1㎏以下の硬度の袋は、とても、口当たりがよくメルチーでした。

tomikan1形質相関

2) 側壁膜の硬度と果実形質との相関
 側壁膜は、果実の形質の一つですので、その他の形質との相関関係を計算してみました。その結果、硬度と袋の諸形質との間に、高い相関係数が得られました。硬度は、糖度あるいは油胞数と、高いプラスの相関関係にありました。また、果重、果形、果皮重、果肉重、室数、などの形質との間には、マイナスの相関関係が知られました。これまで、みかんなどでは、甘い袋が柔らかいといわれてきましたが、富柑では甘いほど硬い膜となっていました。膜の硬度と諸形質との有意な相関関係がこれまでよりはっきりしたのは、1本の木からとった果実の分析結果だったことによると、思われました。

tomikan1棒状細胞
tomikan1解剖相関

3)側壁膜の硬度と側壁膜組織構造との相関
 側壁膜はこれまでと同様にすべて棒状細胞で構成されていました。そこで、側壁膜の硬度と、棒状細胞の幅との相関係数を求めてみましたところ、マイナスの相関関係がみられました。側壁膜の硬度は側壁膜の厚さとは、相関関係にありませんでした。棒状細胞の幅の平均値は15.6μmで、また、側壁膜の厚さは122μmでありました。細胞の肥厚の発達は弱いものでした。少ない細胞数の層幅の側壁膜構造が、袋ごとの食べやすさに関係しているものと思われました。

 これまでのカンキツの育種や栽培では、消費者の嗜好に合わせて、より甘い果実の生産に精力が注がれてきました。各種の甘い優良な新品種が誕生し、また、甘さを乗せる高糖果生産技術が、開発されました。その結果、マーケットには、各種の甘い果実が陳列されるようになりました。今後さらに高度化のステップとしては、食べかすの出ない、より健康的なカンキツ栽培を志向する必要性があるでしょう。袋ごと食べれる果実のカンキツの育種や栽培法の開発が、甘さ追究後のイノベーションになることでしょう。

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ポンカンの果実側壁膜の硬さを測る
ponkan切片
ponkan生産推移

 ポンカンは、これまで鹿児島県、愛媛県、熊本県、高知県、和歌山県の温暖な地域で、順調な生産を遂げてきました。芳香、酸味の柔らかさで、世界的には、ウンシュウミカンより人気のあるカンキツです。側壁膜の硬さがどの程度か、鹿児島県産と熊本県産の果実について調べてみました。 

ponkan硬度

1)側壁膜の硬度
 鹿児島県産の果実は、平均で果重170gで、硬度は4.22㎏ありました。熊本県産の果実は、136gあり、硬度3.18㎏でやや柔らかい隔壁となっていました。全体的には、2㎏から5㎏程度ありました。1㎏程度の食べられるウンシュウミカンには及ばず、袋ごとはすべて食べにくい果実でした。
 
ponkan相関

2) 側壁膜の硬度と果実形質との相関
 側壁膜は、果実の形質の一つですので、その他の形質との相関係数を求めてみました。その結果、果実側壁膜の硬度と、果重、果皮重、油胞数などの形質との間には、高い相関関係がみられました。また、膜の硬度と果肉率とはマイナスの相関関係にありました。

ponkan解剖

3)側壁膜の硬度と側壁膜組織構造との相関
 側壁膜はこれまでの品種と同様に、すべて棒状細胞で構成されていました。そこで、側壁膜の硬度と、側壁膜の厚さ、あるいは棒状細胞の幅との相関関係を求めてみましたところ、側壁膜の硬度は側壁膜の厚さと、高い正の相関関係にありました。側壁膜は平均で236μmと厚く、さらに、平均幅として14μmの棒状細胞で、細い細胞からなる組織構成となっていました。膜厚117μm、細胞幅16μmの袋ごと食べられるウンシュウミカンと比べて、膜の構造の違いが、より高い硬度を示したといえそうでした。

 順調に伸びてきたポンカン栽培でも、最近の品種間競争に打ち勝つためには、さらに一段の果実つくりに励む必要があるでしょう。ポンカンのうまさは、どなたも認めているところですが、消費者の求める商品としては、手が汚れない剥皮性、種無し性、袋ごと食べられる膜壁の可食性などを持つ果実に、さらに魅力を感じています。
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無核紀州の果実側壁膜の硬さを測る
komikan果実

 紀州蜜柑は、紀元前に中国ですでに知られていた、古い種類の小蜜柑です(以前記事;なつかしい小蜜柑、10/01/06)。日本には、紀元5世紀ごろに渡来し、ウンシュウミカンが広く知られるようになった明治までの、とくに、江戸時代の剥皮性で甘味のあるみかんの代表品種でした。日本の風土によく適応していましたので、栽培面積の拡大した過程で、いろいろな枝変わり突然変異をみせました。今回それらの中の種無しの無核紀州の果実が手に入りましたので、側壁膜の硬度の測定と解剖を試みました。

komikan硬度

1)側壁膜の硬度
 果重35g程度の果実が10袋をもっていました。側壁膜の硬度は、1㎏から3㎏程度あり、平均硬度は2.2㎏でした。硬度1㎏の袋ごと食べられるウンシュウミカンには及ばず、袋ごとは食べにくい果実でした。しかし、往時は、果肉丸ごと呑み込んでいたことでしょう。
 
komikan形質相
komikan相関

2) 側壁膜の硬度と果実形質との相関
 側壁膜は、果実の形質の一つですので、その他の形質との相関係数を求めてみました。その結果、袋重を除いて、硬度と、果重、果形、果皮重、果肉重、室数、などの形質との間には、高い相関関係はみられませんでした。しかし、膜の硬度は、袋重や果汁の糖度とプラスの有意な相関関係をみせました。

komikan解剖
komikan棒細胞

3)側壁膜の硬度と側壁膜組織構造との相関
 側壁膜はこれまでと同様にすべて棒状細胞で構成されていました。そこで、側壁膜の硬度と、側壁膜の厚さ、あるいは棒状細胞の幅との相関係数を求めてみましたところ、側壁膜の硬度は側壁膜の厚さ、棒状細胞の幅いずれとも弱い正の相関関係にありました。無核紀州の側壁膜は平均で227μmと厚く、さらに、平均幅として14μmの棒状細胞で、細い細胞からなる組織構成となっていて、このことが、高い硬度を示したといえそうでした。

 最近の研究で、紀州蜜柑が温州蜜柑の母親であったことが分かってきました。とても長い歴史を持つ紀州蜜柑が、薩摩の長島(以前は肥後)で、より優れた温州蜜柑を誕生させたということになりました。両品種の側壁膜の硬さの相違は、果実の大きさの革新とともに、食感改善にこだわってきた日本人の歴史を物語っているようです。
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