キトロロギストXの記録
激しく変化する昨今のもとで一生をカンキツ研究に捧げてきた老学者の独白を広く一般のカンキツ愛好家(キトロロマニア)に聞いていただきたくブログを開設しました。お閑な時にどうぞ目を通してください。
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ブラッドオレンジの果実側壁膜の硬さを測る
bloody果実

 ブラッドオレンジは、主な生産地である地中海沿岸諸国でジュース用として広く利用されています。日本では、愛媛県の26haほどの園地で栽培されていますが、赤いジュース用として希少な需要を持っています。導入されたブラッドオレンジは、タロッコやモロといった品種が主で、このたび欧州では庭園品種として選抜されているモロの果実が手に入りましたので、その側壁膜の解剖を試み、ワシントンネーブルと比較してみました。

bloody棒細胞

1 )袋の側壁膜の硬度
 側壁膜の硬度は、1.5から3.5㎏/cm2の範囲にあり、平均値は2.55kgありました。ワシントンネーブルの2.64㎏/cm2よりやや低い値でした。いずれも袋ごと食べるには難がありました。

bloody形質

2)側壁膜硬度と果実形質との相関関係
 側壁膜の硬度は、果重、袋重、果形などの果実形質との間に、相関関係にありませんでした。また、果汁の糖度ともほとんど関係がありませんでした。

bloody相関係数

3)側壁膜硬度と側壁膜の解剖形質との相関関係
 側壁膜の厚さは、平均値で284μmでした。レモンの400ー500μm、ハウスみかんの100ー200μmの厚さとの中間程度でした。また、側壁膜を構成する棒状細胞の幅は14.1μmほどでしたが、側壁膜の厚さと細胞幅とのあいだの相関関係は認められませんでした。
 そこで、硬度と側壁膜の厚さとの相関関係、さらに棒状細胞の幅とのそれを求めましたところ、側壁膜の厚さとの間に高い相関関係を知ることができました。側壁膜が厚くなると、硬度が高まることが分かりました。

bloody棒細胞比較

4)モロブラッドオレンジとワシントンネーブルオレンジとの比較
 ところが、モロの側壁膜の硬度と膜の厚さでは有意な相関係数、硬度と細胞幅では無意な相関係数という関係は、ネーブルの場合と真逆であることが分かりました。つまり、モロでは、膜の厚さが硬度と相関していたのに対して、ネーブルでは、細胞の幅が硬度と相関関係にあったのでした。このことから、側壁膜の硬度は、側壁膜の細胞の数、細胞の大きさ、細胞膜の厚さ(膜肥厚)の3要素で、左右されていると思われました。

 以上のオレンジ間の比較から、袋の側壁膜の硬さは、側壁膜の厚さ、細胞の太さ、細胞膜の厚さに関係するペクチンなどの構成成分の量と質などの違いで、相対的に表現されているといえそうでした。
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みかん果実の袋膜のペクチン量
pectinmikan袋と膜2

 みかん果実は、果皮のフラべド、アルべド、果肉の袋膜、果肉ベシクルの四つの組織部に分かれます。通常は、果皮をむいて、さらに袋膜をむいてベシクルを食べるか、袋ごと食べて硬い膜部分を吐き出しています。柔らかい膜を持つときは、袋ごとみかんを食べれますが、このときどの程度の量の栄養を多く摂れるのか調べてみました。フラボノイドに次いで、ペクチン量について、検討してみました。ペクチンは、さきの記事(既ブログ記事、16/12/20)のようにおなじみの成分です。食物繊維であって、これを食べることで、腸を整え、便秘の予防に役立ちます。

pectinmikan含量
pectinmikan式

1)組織別のペクチン含量
 みかんは、すでにみましたように極めてペクチンに富む果実です。組織別には、果皮に多く、3-4%みられ、袋膜には5-7%とさらに多く含まれていました。しかし、ベシクルには極めて少なく、0.1-0.3%でした。ベシクルとともに袋膜まで食べれることになると、ペクチンを相当量多く摂取できることが分かりました。
 ペクチン質には水溶性成分と不溶性成分があり、すべて細胞膜外の細胞間に存在しています。ペクチン酸の一部が、メチルエステル化された構造をしていて、無色、無味、無臭の非結晶の物質です。分子量はまちまちで、数百万の巨大分子となっています。水には、粘性の親水コロイドとなり、負に荷電しています。ジャムつくりのヒトにはおなじみですが、糖や酸を加えるとゲル化して、固形となります。

pectinmikan産地別

2)系統間、産地間の含有量の差異
 袋膜のペクチン量と、ベシクルのペクチン量を、系統の違い、産地の違いで比較してみました。ハウスミカン、銘柄産地の早生温州、普通温州、東京鶴川産の早生温州、普通温州、さらに晩生の青島温州について、すべて100g果に換算した場合の、ベシクルと袋膜のペクチン量を比較しました。
 その結果、ハウスミカンと早生温州では、袋膜とベシクル膜ではほぼ同じ量のペクチンがあるのに対して、普通温州、青島温州では、ベシクルよりも数倍のペクチンを摂取できることが分かりました。とくに、晩生のミカンで、多くみられたことは新しい知見でした。

pectinmikan-産地別

3)月別のハウスミカンの袋膜のペクチン量
 同じように、ハウスミカンの100g果に含まれるペクチン量を、月ごとに求めてみました。その結果、ベシクルや果皮では量的に変わらなかったのですが、袋膜では晩期のハウスミカンほど、多くのペクチン量が認められました。成熟期間はほぼ同様ですので、ペクチンの生成量は、生育季節で左右されているようでした。

 ペクチンなど食物繊維は、ヒトの消化器官で分解できません。それでも、食物繊維がヒトの6大栄養素に加えられている理由は、健康増進に貢献できることが分かってきたからでしょう。とくに、水溶性のペクチンについては、便秘だけでなくいろいろな生活習慣病との関係が、はっきりしてきました。糖尿病、コレステロールの高脂血症、動脈硬化、心臓病などへの予防効果が、報告されています。1日に2グラム程度が適量との報告もみられますので、袋膜からの摂取はばかになりません。できたらみかんは袋ごと食べましょう。
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タンカンの果実隔壁膜の硬さを測る
tankanタンカン果実

 タンカン(桶柑)は、中国広東省あたりで偶発実生として生まれた自然交雑品種で、華南、台湾などで古くから栽培されてきました。ところによって、蕉柑とか年柑とも呼ばれています。日本には、明治30年に苗木で導入されました。良品果の生産には高い熱量を必要としますので、栽培は鹿児島県の亜熱帯地域に限られ、現在、屋久島の特産品種となっています。ポンカン(椪柑)の生産が、2万5千トン程度あるのに対して、タンカンは5千トン程度と少なく、東京のマーケットではめったにお目にかかりません。屋久島のタンカンが送付されましたので、袋の側壁膜の硬度を測定してみました。

tankan硬度

1)側壁膜の硬度
 果重115g程度の果実の側壁膜の硬度は、平均で2.5kg/cm2でした。ポンカンの4kg/cm2と比べるとかなり低い値でしたが、ポンカン同様に、袋ごとはすべて食べにくい果実でした。一部のウンシュウミカンのように、袋ごと食べれるのは、やはり1㎏程度の硬度が限界のようです。
 
tankan形質相関

2) 側壁膜の硬度と果実形質との相関
 側壁膜は、果実の形質の一つですので、その他の形質との相関係数を求めてみました。その結果、果実側壁膜の硬度と、果形、1次油胞数、袋数などとはマイナスの相関関係、果皮の厚さとはプラスの相関関係にありました。タンカンは豊円な形をしていますが、それでもより扁平な果実ほど、柔らかい膜となっていました。

tankan解剖相関
tankan棒細胞列


3)側壁膜の硬度と側壁膜組織形質との相関
 側壁膜はこれまでの品種と同様に、すべて棒状細胞で構成されていました。そこで、側壁膜の硬度と、側壁膜の厚さ、あるいは棒状細胞の幅との相関関係を求めてみましたところ、いずれとも相関関係が認められませんでした。ポンカンと同様に、細胞膜の肥厚が極めて顕著でしたので、組織構造との相関が乱されているものと思われました。

tankan収量

 順調に伸びてきたタンカン栽培でも、この5か年来、生産が落ちてきています。品種のマーケット寿命に達したのかどうか、確かめる必要がありそうです。最近の品種間競争に打ち勝つためにも、消費者の求める商品作りに、さらなる努力を必要としています。袋ごと食べれるようになるといいのですが。
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拡大するメキシコのカンキツ生産
mexico標高図 - コピー

 日本の5.2倍の国土(1.96億ヘクタール)を持つメキシコは、その50%を農用地としていますが、農業土地利用からみて、農用地はさらに拡大するものと思っています。その理由として、①熱帯から亜寒帯までの多様な気候帯を持ち、多様な作物の生産が可能であること、②アメリカ、カナダなど巨大な食料消費国に隣接して、農業貿易に有利であること、③農業従事者の多いことなどですが、長い間、政治的理由で限られた農業生産に終始してきました。ところが、最近加盟しているOECD, APEC, NAFTAなどの自由貿易体制でのマーケットの広がりは、内需を満たすに過ぎなかった農業生産地帯に、新しい変革が起こりつつあります。カンキツ生産では、どのように変化しているのか、調べてみました。

mexicoメキシコ生産
mexicoメイズ

1)カンキツ生産地の広がり
 現在、メキシコの果樹面積の最大はカンキツで、50万haほどに拡大しました。中でも、オレンジの面積は、1990年17.6万haだったものが、2010年には33.5万haとなり、2倍程度栽培地が広がりました。この間、小麦やトウモロコシの面積が70万ha程度で変わらなかったところをみると、カンキツ作りへの熱が大きくなり、園地の拡大になった模様です。

mexico東園1

 統計では、オレンジの主産地はヘラクルス州で、50%程度を占め、次いでお隣りのタマウリパス州となっています。いずれも、メキシコ湾沿岸の熱帯地域にあり、雨も多く灌水を必要としない地域です。衛星写真では、この沿岸域は多くの小高い丘陵地となっているらしく、緩やかな丘に営利園地が広がっていました。また、背後のサンルイスポトシ州やヌエボレオン州など、沿岸から内陸に広がる亜熱帯地域にも、まとまった営利園地がみられ、東南部の広域にカンキツ栽培が広がっていました。

mexico西縁1

 また、カリフォルニア湾沿岸のソノラ地域にも、新しい営利園地がみられ、アメリカの加州式の広面積植栽園が認められました。西沿岸地は極めて乾燥し、砂質のステップ地域ですが、灌水施設さえ整えれば好適なカンキツ産地となるようです。この地では、果汁産業に適さないネーブルオレンジを生産しているようです。
 このように、東海岸沿岸地に加えて、背後の傾斜地に広がり、さらには、西海岸沿岸地にカンキツ栽培面積を、この10年で広げた模様でした。

mexico輸出 - コピー

2)果実輸出の拡大
 メキシコは、北米貿易協定(NAFTA)1994年の加盟以降、アメリカとカナダに、大量の生鮮食料の輸出が行えるようになりました。勿論、総貿易そのものはアメリカ依存度が大きく、多くの製品を輸入しているのですが、生鮮食料の輸出は確実に増大しています。中でも、アボカド、ライム、バナナの輸出量が顕著で、このあとはカンキツ類が増大することが予想されます。
 これまで、日本はアメリカのカンキツを中心に多様な果実を輸入してきましたが、メキシコからは、アボカドとライムを輸入してきました。日本でも栽培可能な果樹ですが、営利的には可能性はありませんので、日本では産地形成に至っていません。これからも、メキシコ輸出に依存する果物でしょう。

mexico日本輸入

 メキシコが民生国家となったのはほんの2006年のことで、まだまだ政治的問題がありそうです。これからは豊かな気候、多様な鉱物、油田、広大な土地、豊富な労働力をうまく活用して、先進化が図られるのではないかと思われます。アメリカへの不法移民問題や国境の壁など深刻な報道の多い中で、先進化などといえる状況ではないのかもしれませんがーーーー。

過去関連記事:メキシコの果実生産の動向:10/07/13
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ハッサクの果実側壁膜の硬さを測る
hassaku-ハッサク果実

 ハッサクの食べ方は、果皮をむいてさらに袋膜を剥いで、果肉を食べています。袋の膜(側壁膜と基底膜)は硬くて呑み込む人は少ないものと思われます。側壁膜の解剖を行い、その硬さの特徴を調べてみました。

hassaku-硬度比較

1)側壁膜の硬度の差異 
 ハッサクの果実側壁膜の硬度は、3.8㎏/cm2から5.5㎏の範囲にあり、平均値は4.2㎏でした。デコポンの2㎏と比べて、さらに硬い膜でした。袋ごと食べるにはやや難がありました。

hassaku形質相関

2) 側壁膜の硬度と果実形質との相関
 側壁膜の硬度と、果実の形質との関係をみるために、相関係数を求めてみました。その結果、硬度は、大きくみて、果重、袋重、ベシクル数、ベシクル重などの諸形質との間でプラスの相関関係にありました。また、果肉の糖度との間に、高いマイナスの相関関係がみられました。

hassaku解剖相関
hassaku側壁膜細胞

3)側壁膜の硬度と側壁膜組織構造との相関
 側壁膜の硬さは、構成細胞の棒状細胞の厚さや強さ、さらには、細胞同士の接着の強さに左右されているものと思われます。そこで、側壁膜の硬度と、棒状細胞の幅(平均15μ)、側壁膜の厚さ(平均230μ)との関係をみましたところ、硬度は棒状細胞の幅や側壁膜の厚さとの間に、弱いプラスの相関関関係にあることが分かりました。硬度の低かったデコポンの細胞幅や膜の厚さは、それぞれ平均値12.1μと平均値170μmありましたので、両者の硬度の違いは、組織構造の違いでもたらされているものと思われました。

 食感としての食べ物の硬さは、なかなか複雑で、口内での砕け易さ、粘着性、喉ごし性など、異なった視点からの検討が必要のようです。そのため、側壁膜の硬さを、硬度計の測定値に加えて、棒状細胞幅、側壁膜の厚さなどの組織構造の違いや、ペクチンなど膜成分量の違いなどを、種類間で、総合的に比較し、判断する必要がありそうでした。
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