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キトロロギストXの記録
激しく変化する昨今のもとで一生をカンキツ研究に捧げてきた老学者の独白を広く一般のカンキツ愛好家(キトロロマニア)に聞いていただきたくブログを開設しました。お閑な時にどうぞ目を通してください。
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カンキツ生産地のヒートインデックスの変化
ondanka八王子

 カンキツの栽培適地を判断するうえで大切な指標に、ヒートインデックス(heat index =温量指数)(HI)があります。この求め方は、カンキツの限界細胞分裂温度など生理活性温度が55F(≒ 12~13℃)にあるところから、月平均気温がこれを上回る月について、上回った温度に月日数を乗じて、年積算にした数値になります。アメリカでは、グレープフルーツ栽培適地として、3000を超える地域、オレンジには2000、レモンには1000の数値が、HIの判断基準に使用されています(ウエッバー)。
 そこで、日本のカンキツ産地のHI=Σ((Tm-13℃)×月日数)と日温度格差を計算し、温暖化のひどかった令和元年のHIが、どの程度の違いをみせたのか検討してみました。

ondanka平均気温

1) カンキツ産地のヒートインデックスの平年値
  日本の主だった5地点の平均気温の過去30年間の平年値は、鹿児島の屋久島を除き、農水省のみかん栽培の指針(1986)である15℃以上17℃以下の地域に限定されていました。しかし、異常高温気象だった令和元年は、すべての地域で17℃を超えて、亜熱帯の18℃に近い気温でした。

ondankaヒートインデックス

  各地点のHI値は、30年間の平年値として、屋久島2429、和歌山2000、愛媛宇和島1964、熊本岱明1954、静岡1878でした。屋久島だけがオレンジ適地の数値でしたが、日本のカンキツ栽培地には、従来指摘されていましたように、オレンジ適地は限られているものと思われました。日本のカンキツ産地の大方は、ウンシュウミカンが適地であることは当然として、オレンジには不足、レモンにはHI適地といえました。

ondanka日格差

2) 令和元年のヒートインデックスの高まり
  そこで、令和元年の単年度のHI値を求め、平年のHI値との差をみましたところ、静岡が240、愛媛宇和島が120程度の数値となり、地点により相当のHI格差の違いがみられました。カンキツの種類によって、気候変動へのストレスは異なることが予想されますので、HI値の変化への品種ごとの反応を、今後注目していく必要がありそうです。

ondankaHIの平年差

3) 日温度格差の変化
  カンキツ栽培では、とくに秋口の昼温と夜温の日格差がどの程度あるか、品質向上にとってとても大切です。過去30年間の温度日格差は、大方の産地で8℃前後でした。ポンカン、タンカン栽培地の屋久島は6℃で、ウンシュウミカンの品質は良くありません。そこで、令和元年の日格差との差を計算してみました。その結果、令和元年は、屋久島、岱明では、日格差が0.4℃前後少なかったことがわかりました。このことが、屋久島のポンカン、熊本のデコポンの品質にどの程度影響したか、気になるところです。愛媛、和歌山、静岡の間では、緯度が高いほど日格差は温暖化で小さくなっていました。今後、成熟期間における日温度格差の何らかの指標が、必要のように思われます。

  日本では、デコポンなど育成品種がカンキツ栽培にとって重要になっています。それぞれの品種が、どのような温度環境で最良の品質を発揮できるかを示す新しい指針が、温暖化の進む今日とても大切なように思われます。信頼できる気象データが、気象庁から毎年提供される恵まれた日本です。日本ならではのHI指標や、新しい日格差指標を作りたいものです。
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東京産のポンカンの品質は
ponkanne果実

  ポンカンは、原産地インドから唐の時代に中国にわたり乳柑と呼ばれていました。その後、1796年に台湾に入り、凸柑とかポンカンの名称で親しまれるようになりました。日本には、明治29年(1896)に鹿児島に導入され、以来日本でもポンカンの名で流通してきました。原産地では、スンタラ(santra or suntra)と呼んでいます。世界では、手で皮の剥けるマンダリンの中で ポンカンが最もおおく生産されていて、各地にいろいろな系統が生まれ、優良系統の生産が拡大中です。日本では、平成10年頃まで着実に生産を伸ばしてきましたが、4万トンを最高に以降生産が落ちてきました。ポンカンは、デコポンなどの新しい品種に押され、すでに、マーケット寿命に達した種類となりました。

ponkanne生産量推移

  ポンカンは、世界に広まったように、作りやすく食べやすい亜熱帯に適する種類であり、ミカンの栽培地には適していません。それでも温暖化のせいでしょうか、先ごろ東京産のポンカンが店頭にみられるようになりました。そこで、鹿児島産や愛媛産などの果実と、東京産の品質を比べてみました。

ponkanne果重と果皮厚
ponkanne果皮と油胞

1)外見の違い
  令和元年の東京産のポンカンは着色が遅れ、年を越して1月初旬に収穫日を迎えました。果重は小さく120g前後でした。果重と果皮の厚さの関係をみますと、銘柄産地の果実と同じ傾向にありました。また一般に、ポンカンは、果皮率が高いと、油胞密度が高いという傾向をみせます。東京産を比べますと、銘柄産地と同じ傾向をみせました。したがって、令和元年の東京産ポンカンは、着色の濃厚さは劣りましたが、外観的には銘柄産地のポンカンと遜色がなかったといえました。

ponkanne果重と糖度
ponkanne糖度と果皮率正

2)果肉の品質
  ポンカンは、どの銘柄産地産の果実でも袋ごと食べるには膜がかたく、呑み込むのに難があります。東京産の果実は、種子や酸味の欠点を除くと、果汁量、糖度など果肉の上で欠点はありませんでした。令和元年度の異常気象が、肉質向上に役立ったようです。しかし、東京産のポンカンは、ベシクル密度(果肉10g当たりのベシクル数)が低く、さらに今後、糖度を高めるには、長柄、短柄のベシクルの分化について改善する必要がありました。
  
ponkanne短柄率
ponkanne果梗とべし密度

  120年を超えるポンカン栽培の経験から、日本では世界をリードできる優秀な品質のポンカンに至らなかったと思われます。その最大の理由は、ポンカンが最良の品質を発揮しているインド高原のナグプール産地のような温量指数(heat index)4950と比べて、ベストと思われる屋久島で2428のように極めて温度不足地にあるためでしょう。亜熱帯果実のポンカンは、ウンシュウミカンが温帯の日本で本領をみせるようにところを得ないと、高品質の果実生産が無理な種類のようです。
さらに、ポンカンは、成熟までの温度量に加えて、成熟期の乾燥と日温度格差が適当でなければならない、気難しい種類なのです。八王子のヒートインデックスは1533とさらに低く、令和元年のような異常高温年でないと、東京での果実生産は無理でしょう。東京産ポンカンは、ハウス栽培以外には営利的可能性をもちません。
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令和元年の東京産みかんの品質は
 東京は、地球温暖化の影響とともに、ヒートアイランド効果による温暖化で、冬の寒冷さをさほど感じなくてよいようになりました。気象庁の報道では、令和元年(2019)の秋(9-11月)は、過去最高の平均気温を記録したようです。街路樹のイチョウの黄葉は、大変遅く12月まで続きました。
  東京産の宮川早生樹の結果状況はどうだったかといいますと、裏年にあたった令和元年は、きわめて着色が遅れ、劣悪な品質の年でした。表年だった前年に比べ、どのような品質上の相違がみられたのか、データを比べてみました。

ikedamiyawゆほう密度

1)外観上の相違
  令和元年は、みかんの裏年のせいで、宮川早生の着花数が少なく、果実は大玉になりました。また、気温が異常に高い日が続きましたので、果皮の着色が15日くらい前年に比べて遅く、収穫が12月初旬にずれ込みました。果皮の油胞数は前年度に比べて明らかに少なく、2018年が74個/cm2だったのに対して、2019年は56個/cm2でした。果実の大きさを勘案しても、油胞密度の粗な年といえました。

ikedamiyaw糖変化

2)果肉の品質
  食味では、皮をむいて果肉を口にするときに、袋膜の厚さが気になります。袋膜の重量と袋膜の重さ割合(膜重率%=袋膜重/袋重×100)を、両年度で比較しましたところ、膜重率は2018年5.96%、2019年6.15%であり、やや両年で差異がありました。しかし、袋膜ごと食べられる高品質の膜重率4-5%には両年とも及びませんでした。

ikedamiyaw果重と糖度
ikedamiyaw果梗径と糖度

  果汁の糖度は、果実の大きさに関わりなく2019年は低く、糖度の上昇も緩やかでした。
また、糖は果肉の長柄ベシクルと短柄べシクルに蓄えられますが、短柄ベシクルにより高く糖の集積ができますので、短柄率が高いほど袋の果汁糖度は高くなります。そこで、両年の果肉の短柄ベシクル率を比較しましたところ、2018年の短柄ベシクル率の平均は、45.7%であったのに対して、2019年は、47.0%で明らかにベシクルの分化の在り方に違いがみられました。

ikedamiyawべし糖と
ikedamiya果実宮

  令和元年の果汁の糖度の低さは、糖をためるベシクルという入れ物にも違いがみられたことになりました。ベシクルの分化は、果実の生育ステージの1期で決定されていますので、令和元年は秋の成熟期の異常な高温ばかりでなく、春季の気象もマイナスの影響を与えていたといえそうです。
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令和元年は最も暑い秋を過ごしました
ikedamiyag有田山

 気象庁によりますと、令和元年の9月-11月の平均気温は、偏西風軌道の変化で過去最高を記録したとのことです。東日本は平年より1.7℃、西日本は1.5℃高い気温でした。2018,2019の2年続きで過去にない記録だったようです。作物の作柄はお天気次第といわれています。カンキツ栽培地での気温の詳細を、和歌山市と東京都八王子市の9月以降のデータで計算してみました。

ikedamiyagきんと格差

1) 日平均気温の平年値の推移
  過去30年間の日平均気温の平年値は、和歌山では9月1日27.2℃、12月31日6.9℃で、この間ほぼ直線的に気温の低下がみられました。一方、八王子では、9月1日25.1℃、12月31日3.9℃で、この間ほぼ和歌山の数値と平行して平均気温が低下しました。
20℃の日平均気温に達するのは、和歌山で10月10日、八王子で9月26日となっていて、八王子は和歌山より14日早く秋を迎えていました。みかんの成熟に必要な積算温度ヒートインデックスは,2000℃必要ですので、八王子の収穫日はそれなりに遅くなることが理解できるでしょう。

2)日温度格差の平年値の推移
  カンキツの果実への光合成産物の転流には、昼温と夜温の温度格差のあることが生理的に必須です。9月以降の過去30年間の日温度格差の推移は、和歌山では8℃前後でほぼ一定していました。このことは、みかん栽培の適地条件としてとても大切なことです。
一方、八王子では9月は8℃前後で一定していましたが、10月以降の日格差は漸増していました。そして、12月の終わりの日格差は、12℃で極めて大きい数値となりました。八王子で良好な日温度格差を得るための対策には、温度を下げるか、温度を上げるかの2つの方策が考えられるでしょう。

ikedamiyag気温平年差2019
ikedamiyag気温と較差2018

3)2018,2019年の9月以降の日平均気温と平年値との差違
  みかんの収穫期を5期間に分けて、9月以降の日平均気温の平年差を、2018年と2019年について計算しました。その結果、両年とも和歌山、八王子ともに平年より日平均気温が高かったことがわかりました。とくに、2018年の秋(11月から12月初旬)は、八王子で3℃、和歌山では2℃も高いものでした。2019年は、高い気温が長期に続いたのが特徴としてみられ、平年より2℃前後の高温を記録しましたが、11月26日から12月10日の期間は、両地ともほぼ平年値で推移しました。この低下で、みかん果皮の着色が一気に促進されました。

ikedamiyag日格差2019
ikedamiyag日格差2018

4)2018,2019年の9月以降の気温日格差と平年値との差違
  みかんの収穫期を5期間に分けて、9月以降の気温日格差の平年差を、2018年と2019年について計算しました。その結果、2018年は9月以降すべての期間について、日格差は平年に比べて不足していました。しかし、不足の程度は和歌山で小さいものでした。八王子の日格差は、平年に比べて1.3℃ほど不足していました。
  また、2019年は、和歌山での日格差は、平年に比べて9月は通年どうりで変わらず、10月に不足していましたが、11月には回復して通年どおりに推移しました。一方、八王子での日格差は、平年に比べて9月以降2℃ほど不足して推移しました。

 ikedamiya玉伸び

  八王子では、2019年の秋は温度が高く、しかも、夜温が高かったことで、温暖化が日温度格差を小さくする効果をもたらしたといえました。八王子でのこの日格差の変化が、東京産のみかんの品質改善に役立ったかどうか、興味あることでした。
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紅まどんなの果梗と果実維管束の連絡は

benimado紅窓果実

 紅まどんなは、愛媛県育成の年内収穫を可能にした早生型カンキツ品種のホープです。1990年に「南香」と「天草」の交配で誕生したもので、交配歴4代目に生まれました。交配親としてたずさわった品種は、グレープフルーツ、ダンシータンゼリン、ウンシュウミカン、オレンジ、クレメンチンでした。大切にしたい品種です。この30年で2000トンを超える生産量に伸びてきました。
 ウンシュウミカン並みに糖の集積を早期に行っている紅まどんなが、果梗と果実の維管束連絡をどのようにとっているか観察してみました。

benimado維管束連絡
benimado連絡比

1) 紅まどんなの果梗径と果実ヘタ直下の腹側維管束のリング径
  紅まどんなの果梗直径の平均値は4.7㎜、腹側維管束リングは3.4㎜でした。したがって、その比は1.4で、デコポンの1.1と比べて大きい数値でした。しかし、果実が大きい場合には、1.25となっていましたので、この比は果実の大きさと関係していそうでした。

benimado木部径と短柄率
benimado短柄率と袋
benimado糖度と短柄率

2) 果梗径、リング径と果実諸形質との相関関係
  一般に、カンキツの果肉の糖度は大きな果実ほど低くなります。この糖のうすまり効果は、紅まどんなの市販20果の調査結果でも認められました。しかし、紅まどんなは、個々の果実の重さに関係なく、ベシクルの短柄率が高いほど、糖度が高いという傾向をしめしました。糖をためるベシクルの分化が関係していて、長柄ベシクルより短柄ベシクルの割合が高い果肉が、糖の集積を積極的に進めている可能性を示唆していました。

  紅まどんなの維管束では、果梗の木部の分化が、ベシクルの短柄率の低下につれて活発になる傾向をしめしましたので、果梗の木部分化を弱める栽培法をとることで、糖度が高められると思われました。2次組織からなる果梗の維管束の活動が、葉から糖を、根から養分や水を、1次組織の果実の維管束へと通導して、果肉ベシクルの糖蓄積など品質の向上に貢献しているのですから、高糖の紅まどんなの生産には、維管束の分化や木化の進行のあり方が、注目されるところでしょう。
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