キトロロギストXの記録
激しく変化する昨今のもとで一生をカンキツ研究に捧げてきた老学者の独白を広く一般のカンキツ愛好家(キトロロマニア)に聞いていただきたくブログを開設しました。お閑な時にどうぞ目を通してください。
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みかん果肉の袋膜重を比較してみると
sokumaku-ハウス袋膜

 いうまでもありませんが、みかんは皮をむいて、袋膜に包まれたじょうのう(ベシクル、つぶつぶ)を食べます。袋の膜が柔いときは、袋ごとほうばることができます。袋全体は、組織学的には、子房の内果皮由来の細胞群ということになります。袋膜は、側壁膜の隔壁(septum )と基底膜の内果皮(endocarp)で、基底膜の内果皮の表皮細胞から分化したベシクルを包んでいます。この側壁膜と基底膜の袋膜の重さを測定し、いくつかの知見を得ましたので、紹介します。

sokumaku青島園地

1)同じ園地の果重と袋膜重の関係
 青島温州の同じ園地の果実は、果重と袋膜重の間に高い相関関係を示しました。大きな果実が、広い袋膜にベシクルを包んでいることは、当然だと思われます。生産者が等しく持っている所感でしょうか。

sokumaku東京産
sokumaku-銘柄

2)普通産地と銘柄産地の果重と袋膜重の関係
 ところが、市販されている東京産の普通温州果実は、果重と袋膜重の間に相関関係を示していませんでした。果皮が厚くて、果肉率の低いものがありました。また、愛媛県など銘柄産地の普通温州果実でも、両者の間に高い相関関係を知ることができませんでした。このことは、流通業者や消費者が等しく持っている感触で、生産者の袋膜に対するとらえ方と異なります。

sokumakuハウス

3)ハウスみかんの果重と袋膜重の関係
 流通するハウスみかんには、5月収穫から9月収穫までの果実が売られています。どの月の果実も、果重が110gを超えることは滅多にありません。袋膜重は、ほとんどが5g以下で、薄い膜でした。そのために、維管束の筋を取ると、袋ごとおいしく食べられました。
 また、果重と袋膜重の関係は、産地間で大きな違いがありませんでした。

 みかんには、多くの系統があり、また、栽培法で品質が大きく異なります。しかし、店頭に、いろいろなみかんが並んだとしても、袋ごと食べられるみかんは、消費者にとって格別なように思われます。測定では、袋膜重は1gから20gと大きな変異幅を示しました。どのような性質の袋膜が丸ごと食べられるのか、その組織細胞学的違いはどこにあるのか、興味の持てる話題ではないでしょうか。
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果肉のマグネシウムはどのくらいありますか
magnecium欠乏葉
magnecium分子式

 マグネシウム(Mg)は、窒素、リン、カリウム、カルシウムとともに、多量要素として必須な植物の元素です。したがって、栽培では、適量の施肥を必要としています。
 植物体では、Mgは、葉緑素の中心核の元素となっていて、ポルフィリン環の中央で結合しています。Mgが欠乏すると、葉は、葉緑素欠乏で黄化します。黄化は、古い葉から葉肉に目立ち始めて、化学肥料の連用のみかん園では、よく目につくようになります。
 また、Mgは、キナーゼをはじめ、リンの関与する多くの酵素反応の活性剤として作用しています。果肉のMg含量について、2,3の知見を紹介します。

magnesium種類間

1)果肉のMg含量の種類間差
 21種類の果樹のほとんどの果肉には、新鮮重100gあたり5-15mgのMgが含まれていました。最も多いバナナには35mgありました。また、カリウムの含量との相関関係は、果肉では知られませんでした。

magnesiumカンキツ

2)果肉のMg含量のカンキツ種類間差
 19種類のカンキツの果肉には、5種類で新鮮重100gあたり10-12mgありましたが、その他の種類では、極めて少ない含量でした。また、カリウムの含量との相関関係は、知られませんでした。


magnesium無機成分葉
magneciumミカン相関係数

3)器官別のMg含量の相違
 Mg は、果肉に少なかったのですが、葉、茎、根の器官では、多くの含量が知られました。秋口のミカンの葉には、Mgが灰分の0.3%ほどあり、果実の0.03%と大きな違いがみられました。その際、葉に0.15%以下ですと、みかん樹はMg欠乏状態と診断されます。
 葉の無機成分間では、Mg含量は、K含量とはプラス相関を、PやCa含量とはマイナス相関を示しました。

magnesium可溶不溶
magneciumスターフルーツ断

 1980年代から液体クロマトグラフィーや原子吸光光度計が使えるようになって、不溶性Mgと可溶性Mgに分けて、少量の試料の含量を、細かく測定できるようになりました。植物のMgの存在は、葉緑素のように結合して不溶性となっているばかりでなく、水に溶出する陽イオンの状態も知らています。
 スターフルーツの測定例では、葉、茎、根の順番に多くのMgがあり、不溶性Mgに比して、可溶性Mgがより多くありました。葉では新鮮重100gに400mg程度の多くのイオン状態の可溶性Mgが知られました。また、ミカンと同様、スターフルーツでも、果実には極めて少ないMg含量でした。
 また、ほとんどのCaが不溶性として存在していたのに対して、Kは水溶性となっていて、移動性に優れていることが分かりました。さらに、Mgは、器官によって、含量が大きく異なりましたが、可溶性、不溶性の両形態で存在していることを知りました。

 Mgは、ヒトにとっても、細胞のカリウムイオン環境保持や、骨の弾性維持に大切な元素といわれています。また、細胞がエネルギーを蓄積、消費するときに必須な元素とされています。Mgの摂食目標は、1日300mgとの報告があります。ヒトのマグネシウム不足状態は、長引く疲労や細胞浮腫や高血圧などを引き起こすようです。
 このようなことから、食物栽培では、有機質肥料や熔成リン肥、苦土石灰などMg施肥を徹底し、マグネシウムリッチな生産物を提供する必要があるでしょう。
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果肉の発達由来をたずねると
yurai花の模式図

 果肉とは、果実の可食部を指します。果肉の細胞は、ほとんどが柔細胞ですが、極めて肥大した場合(hypertrophy )や、過剰に多い場合(hyperplasia)など、特殊化しています。このような果肉細胞が、花のどの組織部分に分化して由来するかは、果樹の種類によって異なります。通常、果肉細胞が、花の子房の組織部分に分化する果実を真果(true fruit)といい、子房以外の組織部分に分化する果実を偽果(accessory or false fruit)と呼んでいます。どのように異なっているか、ご紹介します。

yurai由来細胞
yuraiカキ
yuraiバナナ
yuraiスターフルーツ

1)真果
 現在、果樹の種類は2792種ほど知られています(田中長三郎、1951)。これらのうちで、果肉細胞が子房の組織に分化する種類が最も多く、中でも、子房壁にあたる場合が多くみられます。さらに、子房壁は、外層(外果皮)、中層(中果皮)、内層(内果皮)にわかれて果肉の発達をみせます。外果皮が可食部になる種類に、キウイフルーツなどがあげられます。中果皮が可食部になる種類は多く、モモ、カキ、ブドウ、バナナ、アボカド、スターフルーツなどがあげられます。また、内果皮が可食部になる種類に、カンキツなどがあります。

 カンキツの場合は、外果皮がフラべド、中果皮がアルべド、内果皮が袋にあたるじょうのうになります。しかし、さきに明らかにしましたように、果肉は袋の中のベシクル(しゃじょう)であり、ベシクルは内層の表皮の細胞から分化しています。果肉細胞は表皮細胞由来ということになります。注目すべきことは、他の果実の果肉細胞が永久組織にあたるのに対して、長柄ベシクルの先端部の細胞は、いつまでも細胞分裂能力を保持していていますので、どちらかというと分裂組織にあたります。カンキツは内果皮由来といっても、内層の表皮由来だと注釈を必要とする種類といえそうです。

2)偽果
 果肉細胞が、子房以外の組織に由来するいわゆる偽果として、胎座由来のリンゴ、イチゴ、ビワなどがあります。また、花柄由来のイチジク、パイナップルなどがあげられます。

yuraiドリアン
yurai-クルミ

 これらと違い、種子の組織が可食部になった果実もあります。クリは種子の子葉を、マンゴスチン、ドリアンは種皮を、ハーゼルナッツ、クルミ、ピスタチオなどは胚を食することになりますが、種子の場合、果肉細胞の性質は、デンプンの蓄積など、液胞のよく発達している他の果実とは異なっています。

yurai心皮子房

 そもそも、子房は、葉状の心皮が向軸面を内側に巻き込んで、葉縁に胚珠を分化して進化したものと考えられています。そして、心皮が1枚関わった場合、種子1個のモモのように、接着部分が縫合線としてみられます。ブドウは2枚の心皮が関わり、4つの胚珠を持ちます。カキでは4枚の心皮が関わったとみられ、心室が8室に分かれています。また、カンキツは種類によって、3枚から25枚位に変異に富み、さらに、種子の数が、枚数が多いほど多くみられます。キウイフルーツでは、さらに多くの心皮の融合で心室が形成されていて、1000粒を超える種子を保持しています。果実は心皮の融合で発達してきたといえます。

 果実は、種子に栄養を与えるために進化してきたと、従来、教えられてきました。しかし、上のように多様な組織由来を示す果肉細胞の多様な進化のあとをみますと、果実は自らのポストハーベスト寿命を延ばすために進化しており、結果として、種子の拡散に貢献してきたように推論できます。胚珠から種子に発育する過程でみられる、胚乳と胚との密接な養育関係は、果実と種子の間にはなさそうです。
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果肉のカルシウムはどのくらいありますか
 カルシウムは、ヒトの骨の成分として、必要不可欠なミネラルでしょう。年を取ると、骨からカルシウムが溶け出し、どなたでも骨粗しょうで悩まされています。植物にとっても、カルシウムは大切な成分で、構成成分として窒素に次いで多く、しかも、樹齢が増すほど蓄積して堅さをつくる大切なミネラルです。したがって、果樹栽培では、カルシウム肥料(過リン酸石灰、消石灰、苦土石灰など)の施用が、窒素、リン酸、カリ肥料についで必須になっています。
カンキツの場合は、秋口の葉に、灰分100gあたりに3から4g含まれると、良好な肥効状態にあると診断されます。カルシウムが不足しますと、葉が小さく厚くなり、葉縁は黄ばんできます。さらにひどくなると、小枝の枯れ込みが顕著になります。
 体内のカルシウムの大移動は、導管を蒸散流にのってみられますが(ローデイング)、しかし、篩管でのカルシウムの移動はないことが知られています。したがって、蒸散の少ない芽や果実での移動は、少ないものと理解されます。そこで、導管の維管束系に乏しい、果肉のカルシウムの動態について、2,3の知見を紹介します。

calcium欠乏葉

calcium果実
calciumカルシウ種間

1)果肉のカルシウム濃度の種類間差
 果肉のカルシウム含量は、湿式灰化試料で滴定法で測定されます。従来のデータをまとめてみますと、ほとんどの果肉に、生重(新鮮重)100gあたり1から30mg含まれていました。ただし、ナッツ類は100から200mgと多く含まれていました。生肉として最も多かったのはドリアンで、50mgありました。カルシウムは、果肉より果皮に多く含まれるのが一般的ですが、果皮果肉ともに食べているキンカンは多く含み、75mgありました。ヒトにとって、果実はカルシウム食品といわれていませんが、ナッツ類やドライフルーツは、Caリッチ食品と認められそうです。

calcium分布

2)細胞でのカルシウムの所在
 果肉の水抽出では、カリウムほどではありませんが、カルシウムが検出されますので、イオン状態Ca2+の存在が推定されます。しかし、ほとんどのカルシウムは、細胞壁とくに中葉(middle lamella)のペクチンと結合し、ペクチン酸カルシウム(カルシウムペクテート)として存在し、膜に弾性を与えています。そこで、イオン状態のCaをもとめて、オスミウムとピロアンチモン酸カリウムの混合液で果肉を染めて、アンチモネートカルシウムの結晶をつくり、遊離Caを電子顕微鏡で観察しました。
 その結果、果肉細胞間に大きな違いがみられましたが、結晶はすべて液胞にあり、とくに、液胞膜トノプラストには、数珠状に多数座上していることが、明らかになりました。おそらく、トノプラストのポンプの位置にあたるものと思われました。一方、カルシウムが多量に所在すると思われる、細胞壁や中葉には結晶がみられなかったことから、これらの部位でのカルシウムの結合型形態の所在を確認できました。
 
calcium周囲中


3)果肉のカルシウム濃度を変化させる
 カルシウムは、一般に、体内再移動の難しいイオンとされていますが、果肉ではどうでしょう。そこで、果肉のカルシウム濃度が、果実の温湯処理で変化するか否か、検討しました。通常、温湯処理は果実の消毒のために行われますが、53℃に10から20分浸漬しました。数日後に、果肉のカルシウム濃度を測定したところ、バナナ、マンゴー、スターフルーツは増大していました。しかし、ミカンでは、減少していました。したがって、前者では、果皮からのカルシウムの補給が、後者では、果肉からのカルシウムの溶脱があったことが分かりました。
 またその際、果肉の周辺部と中央部の部位間での、カルシウム濃度の変化をみましたところ、マンゴー果肉で、周辺部から中央部への移動が確認されました。果肉では、難移動性とみられたカルシウムも、熱刺激に 速やかに反応していました。  
 関連記事: カンキツのカルシウムの動態。 12/04/24

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果実のカリウムはどのくらいありますか
 植物の健全な生活には、細胞の浸透圧の恒常性やスムースな酵素活性を約束するイオン環境が、極めて重要になります。カリウムはこれらに最も関連した陽イオンであり、果実で最も高い濃度を持ちます。そして、水ポテンシャルの調節、しょ糖輸送の調節などを行うとされています。とくに、カリウムに富んだ果実は、ヒトにとっては、アルカリ食品として健康に貢献しています。果肉のカリウムについて、2,3の知見を紹介します。

kariアボカド
kari種類別

1)果実の種類の違い
 まず、果実の種類での違いをみましたところ、多くの果実に、カリウム濃度が果肉100g中に100mgから300mgほど多くありました。中でも、最も多いカリウム濃度はアボカドで知られ、700mgありました。また、カルシウムとのカリウムの相関関係は、果実ではみられませんでした。

kariカンキツ別

2)カンキツの種類の違い
 カンキツは果肉100g中に100-250mgのカリウムを含みました。いまだ試料が少ないために、カリウムの濃度に分類学的な類別は、知られませんでした。また、カンキツ果肉でも、カルシウムとカリウムの間の相関関係は、ありませんでした。
 
kari酸K肥効

3)カリウムの施肥試験
 一般に、植物体は哺乳動物より2倍ほど多くのカリウムを含み、灰分100g中に1.4g程度持っているとされています。ミカン樹では、9月ごろの葉灰分100g中に、カリウムを1.6g程度持つ状態が、健全と診断されます。カリウムが不足した樹体では、収量の低下や果実の小玉化で、生産性が低くなります。そのようなことから、カリウム肥料は実肥えと呼ばれ、窒素肥料、リン酸肥料とともに、毎年春、夏、秋に分けて施肥作業がなされています。成分量は10アールあたりに、窒素30㎏、リン酸21kg、カリ24㎏の大量の化成肥料が用いられています。

kari果肉,果皮

4)カリウムの体内移動
 窒素がアミノ酸の、リンが核酸や細胞膜のリン脂質の構成元素であるのに対して、カリウムを構成元素とした主要な物質は、植物体内にみあたりません。なぜ大量のカリ施肥を必要とするのかは、1980年代から導入がなされた原子吸光分析装置を使い、植物体の組織・細胞レベルの細かい分析が可能となってから、その理由が明らかになりました。

kariK-Ca比

 ミカンでは、カリウムの含量が、葉の5分の1ほど果実にありました。茎や根にはその中間程度でした。また、果皮と果肉では、ミカンでは果肉にカリウムの含量が多かったのに対して、スターフルーツでは果皮に多くありました。この違いは、ミカンが内果皮由来、スターフルーツが中果皮由来の成り立ちの違いにありそうです。
 カリウムは簡単に水に溶出する陽イオン状態と、有機酸などと結合した不溶性金属として存在していました。カリ含量の多いミカン葉では、果実肥大期に不溶性の置換されたカリウムイオンが、果実に大量に移動していました。そして、カリウムイオンは細胞質に集積して、浸透圧を高めました。その膨圧により細胞の肥大生理機能に貢献しているものとみられました。また、果実の肥大期には、しょ糖が果肉の液胞に蓄積して、高い浸透圧を生み出しています。カリウムは細胞質の浸透圧を、しょ糖は液胞の浸透圧をと機能分担しているのではないかと思われました。
 
 また、カリウムはピルビン酸キナーゼなど各種の酵素の補酵素として、活性化に貢献するといわれています。カリウムが、生体膜の酵素にどのように触媒作用を示しているか、さらに研究を必要としています。
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