キトロロギストXの記録
激しく変化する昨今のもとで一生をカンキツ研究に捧げてきた老学者の独白を広く一般のカンキツ愛好家(キトロロマニア)に聞いていただきたくブログを開設しました。お閑な時にどうぞ目を通してください。
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ハッサクの果実側壁膜の硬さを測る
hassaku-ハッサク果実

 ハッサクの食べ方は、果皮をむいてさらに袋膜を剥いで、果肉を食べています。袋の膜(側壁膜と基底膜)は硬くて呑み込む人は少ないものと思われます。側壁膜の解剖を行い、その硬さの特徴を調べてみました。

hassaku-硬度比較

1)側壁膜の硬度の差異 
 ハッサクの果実側壁膜の硬度は、3.8㎏/cm2から5.5㎏の範囲にあり、平均値は4.2㎏でした。デコポンの2㎏と比べて、さらに硬い膜でした。袋ごと食べるにはやや難がありました。

hassaku形質相関

2) 側壁膜の硬度と果実形質との相関
 側壁膜の硬度と、果実の形質との関係をみるために、相関係数を求めてみました。その結果、硬度は、大きくみて、果重、袋重、ベシクル数、ベシクル重などの諸形質との間でプラスの相関関係にありました。また、果肉の糖度との間に、高いマイナスの相関関係がみられました。

hassaku解剖相関
hassaku側壁膜細胞

3)側壁膜の硬度と側壁膜組織構造との相関
 側壁膜の硬さは、構成細胞の棒状細胞の厚さや強さ、さらには、細胞同士の接着の強さに左右されているものと思われます。そこで、側壁膜の硬度と、棒状細胞の幅(平均15μ)、側壁膜の厚さ(平均230μ)との関係をみましたところ、硬度は棒状細胞の幅や側壁膜の厚さとの間に、弱いプラスの相関関関係にあることが分かりました。硬度の低かったデコポンの細胞幅や膜の厚さは、それぞれ平均値12.1μと平均値170μmありましたので、両者の硬度の違いは、組織構造の違いでもたらされているものと思われました。

 食感としての食べ物の硬さは、なかなか複雑で、口内での砕け易さ、粘着性、喉ごし性など、異なった視点からの検討が必要のようです。そのため、側壁膜の硬さを、硬度計の測定値に加えて、棒状細胞幅、側壁膜の厚さなどの組織構造の違いや、ペクチンなど膜成分量の違いなどを、種類間で、総合的に比較し、判断する必要がありそうでした。
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袋ごと食べれるウンシュウミカンの袋側壁膜の特徴
mikanmakuみかん膜

 ウンシュウミカンは食べやすい果実の代表でしょう。果皮が簡単に手で剥けて、手も汚れません。これまで、消費者の嗜好にこたえて、甘いみかん作りに努力してき、その理論に従って、実現できるようになりました。今後は、袋ごと食べれるみかん作りが、付加価値をさらに高める次のステップだと思っています。袋ごと食べられるみかんは、袋膜の硬さが呑み込み易い性質をもっていました。袋の側壁膜の硬度の測定結果は、次のようでした。

mikanmaku-硬度

1)側壁膜の硬度
 果実硬度計で、ウンシュウミカンの袋の側壁膜の貫通硬度を測定しましたところ、早生温州1.92kg/cm2、普通温州3.49kg/cm2、晩生温州3.85kg/cm2の平均値が得られました。硬度は、果実の系統の早晩、成熟日数の順位で、高いことが分かりました。ハウスミカンは、すべてこれらより低い硬度を示し、袋ごと食べることができましたので、果実が小さいことを除けば、膜構造的には理想的ステップ(甘い+袋込み可食)にすでに到達していることになりました。

mikanmaku相関

2)硬度と果実形質との関係
 硬度と、果重や室数など多くの果実形質との間には、高い相関関係を知ることができませんでした。ただ、硬度と果実の高さとの間に、有意なマイナスの相関係数が得られましたので、扁平な果実ほど柔らかい膜になっているものと思われました。

mikanmaku松井データ
mikanmaku系統硬度

3)硬度と側壁膜の厚さとの関係
 観念的には、薄い側壁膜の硬度は低いと思われましたので、膜の厚さをミクロメータで測定しました。これまで側壁膜を測定した事例を探しましたところ、1965年の試験場の報告がありました。それによると、早生温州が160μm、中生温州が180μm、普通温州が210μmほどで、さきの硬度の序列と同じようでした。しかし、晩生温州の青島温州が無かった時代のデータでしたので、改めて、系統と側壁膜の関係をみましたところ、ほとんど関係のないことが分かりました。市販の果実では、栽培条件などが異なりますので、膜厚の相違の変異が大きく、有意な相関を得るには難しいものがありました。

mikanmaku解剖相関

4)硬度と棒状細胞幅との関係
 側壁膜の硬度と棒状細胞の幅との間には、有意なマイナスの相関関係が知られました。この点は、細胞膜の量が、太い細胞で組み立てられた組織ほど少ないと思われますので、納得できることでした。果実の大きさと棒状細胞の幅との間には、全く関係がありませんでしたので、食べれる膜の形成には、膜の棒状細胞の細胞肥大を促進することが重要だと判明しました。

 結論として、みかんの側壁膜の硬度は、側壁膜が太い細胞で構成された場合に、低いという特徴を知ることができました。一方、側壁膜の厚さとは関係を示さなかったので、膜の厚さの構造の違いをさらに検討する必要がありました。果たして、みかんの側壁膜は、構成細胞数が多いほど厚いといえるのかどうか、それとも、細胞と細胞の間(アポプラスチックスペース)にあるペクチンなどの物質の生成量の違いが、膜の厚さに関与しているのかどうか、さらに検討する必要がありました。
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アメリカのカンキツ生産が危ない
naftaレイクアルフレッド

 アメリカのカンキツ生産量が、ここ10年来急速に低下しています。とくに、生産の中心であるフロリダが大変で、2016年産のオレンジが14%、グレープフルーツが11%も去年よりダウンしました。フロリダ州の約1.5%にあたる3200へクタールのカンキツ園が、各所で荒廃しつつあるのです。衛星写真からも、カンキツ園の荒れた様子がうかがえます。アメリカのカンキツは、自国民の栄養に貢献しているばかりでなく、カナダや日本などのマーケットにも大量の輸出をしていますので、他人事ではありません。何が、世界のリーダーをダメにしているのか、その理由について検討してみました。

naftaアメリカ生産
naftaミカンキジラミ

1)カンキツのグリーニング病を未だ克服していません
 カンキツのグリーンニング病はバクテリア(Candidatus Liberibacter spp.)の感染でおこり、ミカンキジラミが媒介してうつるか、接ぎ木で感染する病気です。1919年に中国南部で発見され、1928年には南アフリカで被害をもたらしました。アジアでは、1943年に中国で、1960年にタイで確認されて、瞬くうちに日本を除くアジアのカンキツに、壊滅的被害をもたらしました。アメリカには、ミカンキジラミが1998年に確認され、2005年にグリーニング病がフロリダで発生しました。20014年には、急激な感染拡大がみられ、荒廃園の多いこともあって感染源が広がり、とくにフロリダでは危機的状態になってきました。
 感染しますと、細菌が維管束の師部に詰まり、転流阻害のために栄養が行き渡らなくなって枯死します。現在,木を伐採して園地から取り除くしか対策がありません。世界的に治癒対策が研究されているところです。幸い日本には、沖縄までしかキジラミや病害樹の存在が知られていませんので、被害を免れているところです。先進国のアメリカでさえ押さえきれていないほど、カンキツ産業を衰退させる怖い病気です。

nafta金額バランス
naftaオレンジ

2)カンキツ貿易による外圧に負けそうです
 アメリカの生鮮食料の貿易バランスが、最近、急激にマイナスに転じています。2015年度は176億ドルの輸入に対して、63億ドルの輸出金額でした。輸入金額の最大はメキシコで、40%程度を占めました。メキシコは、1994年から、カナダ、USAと北米自由貿易協定(NAFTA)を締結し、域内3億6000万人の胃袋と直結した農産地になりました。しかし、メキシコのトウモロコシ、小麦、コメ産業は、アメリカの大農方式には比べられないほど弱く、自給を満たすのに精いっぱいの状態です。一方、中南米の協力もあってか、生鮮食料の輸出は順調で、メキシコ国土の農業土地利用が、急速に伸びてきました。
 このところのメキシコのカンキツ生産量をみますと、その急激な伸びが知られます。まもなく、カナダの輸入元を支えてきた北米のカンキツ生産事情は、メキシコ産柑橘に転じるのではと思われます。フロリダのカンキツ農業の姿は、トランプさんのメキシコの壁の心情にも、関わっているのでしょうか。

nafta加州生産

3)異常気象への対応がままなりません
 USAカンキツ生産の第2位を占めているカリフォルニア州は、とくに最大のサンジョアキン産地を中心に、ミカンキジラミの拡散を防除しているために、フロリダほどのグリーニング病被害を受けていません。しかし、たびたび報道されていますように、多雨や干ばつ、冬季の低温など異常気象の災害が頻発して、加州のカンキツ生産を不安定にしています。さらに、灌水のための水不足と水価格の高騰や、収穫などの人手不足と高い賃金が、カンキツ経営を苦しめています。
 
 naftaオレンジ輸入
 naftaレモン輸入

 加州は長い間、日本やカナダなどのオレンジ、レモンのマーケットを賄ってきました。はたして、この地の競争力をこれからも維持できるかどうか、これからが大変なことでしょう。日本のカンキツ産業も対岸の火ではいられないようです。

過去関連記事:アメリカのカンキツ栽培の動向:09/11/10 
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青島温州の果実側壁膜の硬さを測る
aosimamaku果実

 1月に入って、晩生温州の青島温州が出回るようになりました。青島温州の主生産県の静岡県では、平成5年ごろから、10万トン以上の青島温州を安定して生産してきました。市販の静岡産と長崎産の青島温州について、側壁膜の特徴を調べました。 

aoshimamaku生産量
aosimamaku硬度順

1)側壁膜の硬度の産地間差
 側壁膜の硬度は、やや長崎産が静岡産より硬く、2㎏から5㎏程度ありました。普通温州に比較して、極めて硬い膜でした。ほとんどの袋は、呑み込むのに困難でした。呑み込み易さは、早生温州、普通温州、晩生温州の順位になっていて、成熟期間の長いほど、高い硬度がみられました。

aosimamaku形質相関

2) 側壁膜の硬度と果実形質との相関
 側壁膜は、果実の形質の一つですので、その他の形質との相関係数を求めてみました。その結果、果実の袋数と袋の重さが、硬度と相関関係にありました。側壁膜は、袋数が9から12室にばらつく中で、袋数が少ないほど、高い硬度をみせたことになりました。

aosimamaku解剖形質

3)側壁膜の硬度と側壁膜組織構造との相関
 側壁膜の硬さは、構成細胞である棒状細胞層の厚さや細胞膜の強固さ、さらには、細胞同士の接着の強さに左右されているものと思われます。そこで、側壁膜の硬度と、側壁膜の厚さ、あるいは棒状細胞の幅との相関係数を求めてみました。その結果は、側壁膜の硬度は側壁膜の厚さとの相関関係は弱く、また、棒状細胞の幅とは負の相関関係にありました。このことから、棒状細胞がよく肥厚した側壁膜ほど、低い硬度を示したといえそうでした。

 青島温州の側壁膜の硬度の産地間差異が知られましたので、早生、普通、晩生と成熟期間の違いを考慮した、総合した検討が必要なようでした。厚い膜が高い硬度で、細い細胞で構成された膜ほど硬いだろうという、単純な考察は、青島温州では成立しませんでした。
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みかん果実の袋膜のフラボノイド量
flavomikan4組織別

 みかんを食べるときに、袋ごと食べれる柔らかい果実に出くわすと、とても幸せに感じます。まず、手が汚れない、捨てる量が果皮だけで少ないなどのほかに、ベシクルのうまさに加えて、袋膜の栄養を同時に摂れるのではと、何か期待するところがあります。
 みかんは果皮のフラべド、アルべド、果肉の袋膜、ベシクルの組織に分かれますが、組織別に栄養価が顕著に異なります。フラべドは香の精油やカロチノイドやビタミン(C,Bコンプレックス)にリッチな組織です。アルべドはペクチン、セルロース、フラボノイドなどの食物繊維のリッチな組織です。同じように、袋膜も食物繊維リッチです。ベシクルは、スクロース、グルコース、フラクトースなどの糖やクエン酸を含む果汁に富んでいます。
 袋ごと食べるということは、どの程度の量の栄養を多く摂ることになるのか評価のために、まず、フラボノイドについて検討してみました。

flavomikan組織別

1)組織別のフラボノイド含量
 みかん組織別には、アルべド新鮮重100gあたりに、2700mgのフラボノイドを含みました。次いで、フラべドでは1100mgみられ、さらに、袋膜には750mgありました。一方、ベシクルには、わずかに26mg含まれていました。フラボノイドはC6-C3-C6の炭素骨格の植物色素の一群で、植物だけが生成する物質です。4000種類以上ありますが、カンキツにはヘスペリジンなど主に28種類が報告されています。ベシクルに加えて、袋膜まで食べることになると、フラボノイドのいろいろな成分を、相当量摂取できることになりました。

flavomikan産地別

2)果実袋膜とベシクルの袋膜のフラボノイド量
 果実のMサイズ果(100g)には、ベシクルに18.6mgのフラボノイドが含まれていたのに対して、袋膜には38.5mg含まれていて、大きな違いがみられました。そこで、ハウスミカン、銘柄産地の早生温州、普通温州、東京産の早生温州、普通温州、さらに晩生の青島温州について、すべて100g果に換算した場合の、ベシクルと袋膜のフラボノイドの含有量を比較しました。その結果、袋ごと食べるメリットが、晩生の系統ほど、大きくなることがわかりました。

flavomikanハウスミカン

3)月別のハウスミカンの袋膜のフラボノイド量
 同じように、ハウスミカンの100g果に含まれるフラボノイド量を、月ごとに求めてみました。その結果、ベシクルには20mg程度含まれていたのに対して、袋膜には18mgから42mg含まれていて、月を追うほど袋膜の含有量が増大することを知りました。

flavomikan化学式

4)ヘスペリジンの含量
 ヘスペリジンは、みかんのフラボノイド成分中で最も多く含まれているフラボノールで、ヘスペレチンにラムノースとグルコースを持つ配糖体構造をしています。無味、無臭の水不溶性の化合物ですが、含有量は果実の組織別に大きく異なりました。フラべドではフラボノイドの84%、アルべドでは78%、袋膜では57%、ベシクルでは34%程度が、ヘスペリジンでした。
 ヘスペリジンは、抗酸化性を持ち、さらに、ヒトの毛細血管を保護する機能を持っていて、別名はビタミンPです。みかんを袋ごと食べられることは、このような薬効も期待できて、健康増進に資すること間違いなさそうです
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