キトロロギストXの記録
激しく変化する昨今のもとで一生をカンキツ研究に捧げてきた老学者の独白を広く一般のカンキツ愛好家(キトロロマニア)に聞いていただきたくブログを開設しました。お閑な時にどうぞ目を通してください。
201704<<12345678910111213141516171819202122232425262728293031>>201706
青島温州貯蔵果実の側壁膜の硬さを測る
aosimatyo果実
 
貯蔵技術の向上で、晩生性の青島温州が4月に入ってもマーケットを潤していました。香川県産の青島温州が4月17日に手に入りましたので、1月7日の静岡県産の青島温州と比較して、果実側壁膜の硬度の違いがどの程度異なるかみてみました。

aosimatyo硬度

1)側壁膜の硬度の比較
 貯蔵した果実の側壁膜の硬度は、平均で3.88kg/cm2ありました。静岡産の3.57kg/cm2より硬く、硬さが増加していました。2㎏から5㎏程度の範囲にありました。すべて袋ごと呑み込むのは困難でした。呑み込み易さには、早生温州のように1kg/cm2以下の膜硬度をもつ必要がありました。

aosimatyo形質相関

2) 側壁膜の硬度と果実形質との相関
 側壁膜は、果実の形質の一つですので、膜硬度とその他の形質とのあいだの相関関係を求めてみました。その結果、膜硬度はほとんどの形質と相関関係にありませんでした。ただ、果皮の1次油胞の密度とは、やや高い相関係数値がみられました。

aosimatyo解剖相関
aosimatyo貯蔵青島膜

3)側壁膜の硬度と側壁膜組織構造との相関
 側壁膜の硬さと、側壁膜の厚さや棒状細胞の幅との相関係数を求めてみました。その結果は、側壁膜の硬度は側壁膜の厚さとの相関関係は弱かったものの、棒状細胞の幅とは負の高い相関関係にありました。棒状細胞の幅は、細胞の幅と細胞外のペクチンやセルロースなどの肥厚物質の幅が関係していると思われますので、棒状細胞が太いか、肥厚の少ない側壁膜ほど、低い硬度を示したといえそうでした。

aosimatyo糖ベシ
aosimatyo貯蔵糖

4)貯蔵後の袋内の糖濃度の勾配
 普通、収穫期の果実袋の糖濃度の勾配は、ベシクルが頂部にあるほど高く、甘くなっています。貯蔵した果実では、とくに長柄ベシクルでみられましたが、このような勾配が崩れていることが分かりました。貯蔵後にみられた側壁膜の硬度の上昇は、この長柄ベシクル糖の転流があり、棒状細胞の肥厚物質の生成に向けられた結果ではないかと思われました。貯蔵果実には、肥厚物質が多く、側壁膜の硬さを増強したと推定されました。

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日本のカンキツ栽培面積の変遷をみる
menseki面積

 日本列島の西南暖地に、カンキツ園が最も拡がったのは、1973年(昭和48年)頃に22万ヘクタールに達したときでした。この年を境に以降急激に縮小をはじめ、現在(H26)では、ウンシュウミカン4.5万ヘクタール、その他カンキツ2.7万ヘクタールの計約7.2万ヘクタールまで、カンキツの栽培面積は縮小してきました。カンキツの面積変貌の推移について、考察してみました。

menseki-マーケット寿命

1)面積縮小の要因
 ウンシュウミカンの生産量が最高となった1972-1975年頃には、生産過剰に陥り、マーケット寿命がピークに達したときでした。需要と供給のバランスを考えた生産調整を必要としました。
 尤もこのころは、アメリカからのカンキツの輸入外圧が強く、グレープフルーツ、オレンジの輸入量の増加は、日本の晩柑類の生産に大きな打撃となりました。ナツダイダイは1974年をピークに、ハッサクは1985年をピークに、ネーブルは1986年をピークに、イヨカンは1989年をピークに、栽培面積が縮小しはじめ、急速に品種のマーケット寿命を失ってきました。アメリカに、ウンシュウミカンを超える優秀なカンキツの持ち合わせがなかったことが、これ以上の外圧とならずに、幸いでした。
 現在(2014、H26)の国内マーケットは、輸入カンキツ25万トン、国産カンキツ94万トンとなっていて、棲み分けしています。これからも、国際競争力の低下は、このバランスを壊し、直ちにカンキツ栽培面積の縮小、自給率の低下につながることでしょう。

 また、面積縮小の大きな要因に、生産者の老齢化と、みかん樹の老齢化がありました。高い生産技術を持った昭和の生産者が、老齢化によって、急傾斜地に展開したカンキツ園地を持ちこたえられなくなってきました。さらに、みかん樹の生産寿命は30年くらいがピークで、以降はとても手入れを必要とするようになりますが、高い樹齢の園地の増加で、好ましい樹齢ピラミッドとなっていません。古ぼけた機械の手入れのためには、どの産業でも維持が大変なものでしょう。さりとて、園地更新には多大な設備投資を必要とします。生産基盤の弱体化が、栽培面積の拡大を阻害しています。

mensekiみかん園率

menseki-青島果実

2)産業振興への戦い
 飽食の時代で、カンキツへの需要の縮小が起こり、カンキツ面積が小さくなったとする考えがあります。しかし、マーケットをみていますと、リーズナブルな値段の国産カンキツ品種への消費者の購買意欲は、決して小さくありません。県ごとに出荷される銘柄みかん、また、清見ファミリーの品種群、中でも不知火(デコポンなど)が、現在のマーケットを引っ張っています。そこで、生産地の取り組みがどうなっているか、県ごとのみかん園率と不知火園率を求めてみました。
 その結果、7割以上のカンキツ園が、みかん栽培としている長崎県、静岡県、佐賀県と、それ以下の県に分かれていました。静岡県の青島温州の年明け後のマーケットでの奮闘が、園地維持・拡大のキイとなっていました。

menseki不知火園率
menseki-デコ果実

 また、みかん園以外の品種群の栽培面積のうち、デコポンなど不知火を栽培している園地の面積率をみますと、4割以上を占める県として、佐賀県、熊本県、長崎県がありました。熊本県のデコポンと肥の豊の伸びが、産業振興のキイとなっていました。佐賀県と長崎県は、みかん主体の不知火生産地として、地歩が固まってきたようです。

mensekiデコまど

 1.2万ヘクタール強のカンキツ園地を持つ愛媛県、1.0万ヘクタール弱の和歌山県の両大産地は、少量多品種栽培時代のようで、品種集中の途上にあるようです。また、以前からみかん栽培不適地としてきた亜熱帯の沖縄、鹿児島、宮崎、高知の各県は、ポンカン、キンカン、ブンタンなどの品種のさらなる高度化を進めるのが、振興につながることでしょう。外圧に負けず、打って出る日本カンキツ産業を育てましょう。

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カンキツ果実のクマリンについて
 カンキツには、先のフラボノイドと同様に、ポリフェノールの1群であるクマリンが、比較的に多量に含まれています。クマリンには、その化学構造式の違いで、クマリン類、フラノクマリン類、ピラノクマリン類、ピラノ置換クマリン類に分類される成分があり、300以上の種類があるとされています。最近、2010年ごろから、高速液体クロマトとマススぺクトロメトリーを組み合わせた分析法が、精度よく分離定量できるようになり、分析データが豊富になってきました。カンキツ果実では、現在、クマリン類に6成分、フラノクマリン類に21成分が明らかにされ、含有量のデータが蓄積しています。クマリンは、広く植物界でみられて、種によって生成量には大きな相違があります。カンキツ果実ではどうか紹介します。

kumarin化学構造
kumarinミカン早生
kumarinミカン尾張

1)ウンシュウミカンの含有量
 ミカン果実には、クマリン類の2成分、フラノクマリン類に3成分が検出されました。しかし、いずれの成分も新鮮重1kgあたり3mg以下で少なく、早生温州の最高は、クマリン類では、果皮にリメッチンが2.1mg/kgFW、フラノクマリン類では、果皮にベルガプテンが2.1mg/kgFW程度ありました。普通温州では、同様に果皮に多く、最高は2.9mg/kgFWと、エポキシベルガモッチン2.73mg/kfFWでした。従来の分析法による同定では、判明されないほど少ない量でした。

kumarin果皮種類

2)カンキツ種類間の比較
 クマリンの含有量は、全体として果肉より果皮に断然多く検出されました。クマリン類の最高は、タヒチライムの果皮で、360.5mg/kgFWありました。また、フラノクマリン類は542.7mg/kgFWで、果肉にも多くみられました。この場合、タヒチライムの成分としては、クマリン類のリメッチンが多く、オーラプテンが僅かでした。また、フラノクマリン類では、ベルガプテン、イソピンピネリン、オキシピュセドリンなどの成分が多くありました。品種種類によって、クマリンの成分の種類、含有量には随分違いがありました。

kumarin果肉種類

3)クマリンによる化学的カンキツ分類
 そこで、田中長三郎式のカンキツ分類に従って、クマリン成分の化学分類を行ってみましたところ、極めて明白なつぎの分類群を指摘できました。つまり、果皮でも果肉でも、クマリンの生成量は初生カンキツに多く、後生カンキツには少ないといえ、田中の分類法が支持されていました。
 さらに、初生カンキツでは、果皮含有量でみますと、クマリン類、フラノクマリン類いずれも高いシトロン区、ブンタン区、また、フラノクマリン類の特に高いライム区、グレープフルーツ区、さらに、いずれも低い甘ダイダイ区をあげることができました。一方、果肉では、ブンタン区、グレープフルーツ区、ダイダイ区に、特に多くのフラノクマリンの成分がみられました。一方、ミカンやデコポンなどの日本をリードしている種類には、クマリンの生成の低い品種が選ばれているといえました。

4)クマリンとヒトの健康
 クマリンは植物の2次生産物であり、植物にとっては細菌や昆虫などへの防護化学成分とみられています。ヒトにとっては、クマリンの摂取によって、冠状血管の拡張効果がみられ、また、抗炎症や発がん抑制効果などの健康増進に役立つことが知られています。
 しかし、医学、薬理学の面からは、カンキツのクマリンについては、以下の2つの弊害の懸念が示されています。1つは、果皮からとった精油中にあるいくつかのクマリン成分が、紫外線で毒性に変わるとするものです(Phototoxic coumarins)。カンキツのブンタン類とダイダイ類などに多い果皮精油のクマリンは、皮膚塗布の際に紫外線曝光で、皮膚障害やがん誘発の恐れがあるとのことです。
 また、2つは、カンキツジュースなど摂飲時のクマリンと、一部の飲み薬との併用害の問題(Drug interaction)です。これらについては、改めて報告したいと思います。
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カンキツ「肥の豊」の果実側壁膜の硬さを測る
hinoyu収量変遷

 熊本県特産の肥の豊は、デコポン(正式名、不知火)にマーコットを交配して播種した実生の中から選抜された、デコポンの珠心胚突然変異系統として、2000年に品種登録されました。デコポンより樹勢が強く、高糖度で低酸味の優良系統として急激に生産が伸びてきました。3月に果実が手に入りましたので、この品種の側壁膜の特徴を調べてみました。

hinoyu硬度比較

1)側壁膜の硬度の差異 
 果実側壁膜の硬度は、1.74㎏/cm2で、比較のためのデコポンの1.99㎏よりやや低いものでした。袋ごと食べるにはやや難がありました。側壁膜がとくに基底部で破れやすく、また、融合袋も多くみられました。

hinoyu形質相関

2) 側壁膜の硬度と果実形質との相関
 側壁膜の硬度と、果実の形質(果重、果形、果皮重、果肉重、室数、袋重、油胞数などの諸形質)との関係をみますと、すべての形質との相関係数は低く、硬度は、独立した計測値でした。果皮の油胞密度はデコポンとかわらず、油胞が極めて多くありました。

hinoyu解剖相関
hinoyu細胞比較

3)側壁膜の硬度と側壁膜組織構造との相関
 また、側壁膜の硬度と、側壁膜の棒状細胞の幅、側壁膜の厚さとの関係をみましたところ、硬度は、棒状細胞の幅や側壁膜の厚さとの間に、相関関係にないことが分かりました。肥の豊の側壁膜の厚さ、棒状細胞の幅は、デコポンのそれよりやや大きいことが分かりました。細胞壁は両者とも肥厚が顕著でした。側壁膜の硬さは、構成細胞の棒状細胞の膜の厚さや強さ、さらには、細胞同士の接着の強さに左右されているものと思われます。

hinoyuでこ肥豊

4)ベシクルの大きさ
 肥の豊のベシクルは、デコポンのそれより明らかに大きいものでした。このことから、肥の豊の果肉は、デコポンよりより狭い細胞膜の面積となっているので、口内での砕け易さ、粘着性、喉ごし性などが、デコポンより優れていると思われました。

 みかんの興津早生が、宮川早生の珠心胚実生突然変異系統として生まれ、生産増強に貢献したことはよく知られた農水省の研究成果の一つです。同様の育種方法で生まれた熊本県の「肥の豊」は、上の解剖結果からデコポンの早生系統のようにみられますので、鹿児島県のデコポン枝変わりの「大将季」とともに、不知火軍団としてデコポン列島をより豊かにすることでしょう。
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みかん果実の袋膜のビタミンC含量
asucomikan袋

  みかんを袋ごと食べたとして、果たしてどの程度のビタミンCを、通常の果肉のベシクルだけ食べる場合より余計にとったことになるのか、検討してみました。みかんといえばビタミンCを連想するほど、おなじみの物質ですが、常用名をアスコルビン酸といいます。化学構造式は、先のフラボノイドやペクチンに比べて単純です。
  アスコルビン酸には、酸化型と還元型がありますが、みかんではほとんど還元型アスコルビン酸となっています。体内代謝で酵素的に壊れると、蓚酸や酒石酸などに分解されます。日本人には1日に100mg程度の摂取が必要とされていて、その給源のほとんどは、みかんなど生鮮食物からとられています。袋膜のビタミンC量を調べてみました。

asuco器官別

1)袋膜とベシクルのビタミンC量
 みかん果実の組織別に、新鮮重100gあたりのビタミンCの含有量を求めましたところ、果皮174mg、袋膜136mg、ベシクル34mgの平均値を得ました。最も多かった果皮では、アルべドよりフラべドに多くみられましたが、アルべドにより多い場合もありました。
 100gの果実を食べたとしますと、袋膜からは平均値として7.0mgを、ベシクルからは23.6mgのビタミンCが摂取できることが分かりました。

asuco推移

2)果実成熟とビタミンC量の変化
 果実成熟期の10月以降のビタミンC含有量は、経時的に増大しました。収穫までの2か月間に、果汁では4倍程度、果皮では5倍程度の増加をみせました。オレンジでは、ビタミンC含量が収穫期に近づくほど減少するといわれていますが、みかんとは事情が異なることを知りました。

asuco系統

3)産地・系統別のビタミンC量
 同じ100gの果実を食した時のビタミンC摂取量は、ベシクルでは早生系統ほど多く、一方、袋膜では晩生系統ほど多くとれることが分かりました。このことから、ビタミンCへの袋膜摂食のメリットは、晩生の系統または晩採果ほど大きいくなるものと思われました。

asucoハウス

4)ハウスミカンの月別のビタミンC量
 収穫月を異にするハウスミカンの100gの果実を食した時のビタミンC摂取量は、ベシクルではどの月も25mgほどで、ほとんど同じようでした。しかし、袋膜では8月、9月採取のハウスミカンで、ビタミンCをより多くとれることがわかりました。

asuco化学式

 ビタミンC(アスコルビン酸)の同定は、1928年と早く、分析法も比較的簡単なために、古くから多くの報告がみられました。カンキツでは、その含量が、栽培種、発育度、部位、作型、栽培条件などの違いで大きな違いをみせ、また、貯蔵、流通上での減少の度合いの違いが認められました。ビタミンCのヒトへの必要性については論をまたないところですが、問題は、体内に留まることのない性質上、毎日補給する必要性があることでしょう。健康維持のためにも、袋ごと食べるみかんのように、毎日少しでも多くのビタミンCの摂食を心掛けたいものです。
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