キトロロギストXの記録
激しく変化する昨今のもとで一生をカンキツ研究に捧げてきた老学者の独白を広く一般のカンキツ愛好家(キトロロマニア)に聞いていただきたくブログを開設しました。お閑な時にどうぞ目を通してください。
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オアマンダリンの果実側壁膜の硬さを測る
oaman果実です

 イスラエル育成のオアマンダリン(マーコット×ダンシーの交雑品種)が5月7日に1果75円で手に入りましたので、さっそく側壁膜の硬度を、5月5日に購入したハウスミカンと比較しながら、測定してみました。平均果重は112gあり、ハウスミカンの50g(1果200円)に比べ大きいものでした。

oaman硬度比較

1)側壁膜の硬度
 果実の側壁膜の硬度は、平均で1.88kg/cm2ありました。大分県産のハウスミカン1.89kg/cm2とほぼ同様でした。しかし、袋ごと呑み込むのにはやや困難でした。1kg/cm2以下の膜硬度を示すハウスミカンのような果実はありませんでした。硬度がほぼ同じでも、袋ごと食べれる果実がハウスミカンには多くみられました。

oaman形質相関

2) 側壁膜の硬度と果実形質との相関
 側壁膜は、果実の形質の一つですので、膜硬度とその他の形質とのあいだの相関係数を求めてみました。その結果、膜硬度は、ほとんどの形質と相関関係にありませんでした。

oaman解剖相関
oaman細胞幅

3)側壁膜の硬度と側壁膜組織構造との相関
 側壁膜硬度と、側壁膜の厚さや棒状細胞の幅との相関係数を求めてみました。その結果は、側壁膜の硬度は、側壁膜の厚さならびに棒状細胞の幅と、負の相関関係にありました。棒状細胞の幅には、細胞の幅と細胞膜外のペクチンやセルロースなどの肥厚物質の厚さが関係していました。細胞の幅は、ハウスミカンと同様でしたが、側壁膜の厚さが356μmと厚く、ハウスミカンの116μmとくらべて3倍も厚いものでした。両者の間で硬度がほぼ同じでしたので、厚い側壁膜でも破れやすい構造をしていると思われました。

oaman相対値

側壁膜の硬度の高低には、単に膜が薄く、構成細胞が太い構造が低硬度となるだろうという予想は、オアマンダリンでは通用しないようでした。やはり、細胞構造に加え、細胞間隙のセルロース、ペクチンなどの肥厚物質の沈着状況が、側壁膜の硬さに関与しているものと推定できました。

 

関連記事:イスラエル産のオアマンダリンのこと。12/05/01 
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平成のカンキツ輸入貿易の相手国
boekiaite港湾

 平成になって、日本のカンキツマーケットでは、国産カンキツの健闘がはっきりしてきました。このところの訪日観光客が、デパ地下の売り場で、高値の国産カンキツを盛んに購入しています。輸入カンキツと食べ比べて、違いを納得して帰国されることでしょう。それにしても、昭和のカンキツ自由化決定のころは、価格競争で日本からみかんが消えうせるとの風評があり気をもんできたのですが、これも関係者の努力で杞憂に終わったようです。しかし、貿易によって、日本のマーケットから多くの在来品種は消えました。貿易の相手国はどこだったのかまとめてみました。

boekiaite貿易収支

1.日本の貿易収支
 日本は貿易によって経済発展してきました。一般の貿易収支の推移をみますと、昭和の終わりまでは、大きな貿易黒字となり債権国として発展し、主な相手国のアメリカとの間で深刻な貿易摩擦を生みました。平成10年頃のデトロイトの自動車産業をみたとき、さびれた町に驚いた経験があります。しかし、平成20年ごろからは、日本の貿易収支は整ってきています。

boekiaite貿易割合

 財務省貿易統計によりますと、最近の最大の輸入相手国が、アメリカから中国に移ってきたようです。2016年(平成28年)は、輸入総額(約66兆円)の26%を中国に、11%をアメリカに支払いました。日本の貿易の主なプレーヤーは商社の皆さんです。貿易の相手国は216カ国に達しています。生鮮食品の中では、カンキツは輸送に耐えるほうですので、アメリカのカンキツ産地から直接貿易となっていますが、商社輸出の帰り船で、その他の海外のカンキツ産地から珍しい品種が運ばれることも多いようです。

boekiaite輸入推移

2.日本のカンキツ輸入国
 日本のカンキツ貿易は、もっぱら輸入が主流です。最大のカンキツ輸入量は、1997年(平成9年)に56.8万トンに達しました。しかし、これを境に、2001年(平成13年)に49万トン、2006年に37.8万トン、2011年に34.8万トン、2016年に25.4万トンと輸入量が減少してきました。これには、日本のカンキツ自由化の門戸を開いたアメリカの生産不振が関わっていて、2001年にはアメリカ産のシェアーが88%だったものが、去年(2016年)は60%に落ちてきました。

 去年の日本のカンキツ輸入の相手国は、アメリカ(15.3万トン)に次いで、オーストラリア(3.7万トン)、南アフリカ(3.5万トン)、チリ(1.7万トン)となり、これらが4大相手国となっていました。全体では15カ国から輸入しましたが、その他の国は5千トン以下で今のところ少量でした。北米のメキシコ;地中海沿岸のイスラエル、トルコ,モロッコ、スペイン;南アフリカのスワジランド;オセアニアのニュージランド;アジアの台湾、ベトナム、中国、タイが少量輸出国でした。いづれの国も、高値市場の日本のマーケットのシェア拡大に努力しています。 
 
 輸入相手国のカンキツの生産は、数えるほどの大農園主により行われている国と、多数の農民による国があり、流通の戦略が異なっています。消費者は、いずれの国からであっても、これまで同様に、価格もさることながら、安心、安全のフルーツマーケットの醸成に努めましょう。

関連記事:10/05/18:平成のカンキツ輸入の動向は
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アフォーラ果実の側壁膜の硬さを測る
ahoramaku-あほら果実
 
4月末にアフォーラが1果50円で売られていました。カリフォルニア産でW.マーコットの名がついていて、本来の果実より小果でした。輸送臭があり、貯蔵青島温州の比ではありませんでした。アフォーラは、本来、みかんに匹敵するほどマンダリンとして優れた品種ですが、異常気象で品質を発揮できなかったものと思われます。果実側壁膜の硬さを測定してみました。

ahoramaku硬度序列

1)側壁膜の硬度
 果実の側壁膜の硬度は、平均で3.38kg/cm2ありました。静岡産貯蔵青島の4.29kg/cm2よりや低いものでした。袋ごと呑み込むのは困難でした。早生温州のように呑み込める、1kg/cm2以下の膜硬度を示す果実はありませんでした。

ahoramaku形質相関

2) 側壁膜の硬度と果実形質との相関
 側壁膜は、果実の形質の一つですので、膜硬度とその他の形質とのあいだの相関係数を求めてみました。その結果、膜硬度は、袋の高さを除いて、ほとんどの形質と相関関係にありませんでした。

ahoramaku解剖相関
ahorakaku細胞配列

3)側壁膜の硬度と側壁膜組織構造との相関
 側壁膜の硬さと、側壁膜の厚さや棒状細胞の幅との相関係数を求めてみました。その結果は、側壁膜の硬度は側壁膜の厚さとの相関関係は弱かったものの、棒状細胞の幅とは正の相関関係にありました。棒状細胞の幅には、細胞の幅と細胞外のペクチンやセルロースなどの肥厚物質の厚さが関係していますので、棒状細胞が太いか、肥厚の大きい側壁膜ほど、高い硬度を示しました。また、硬度は果皮の油胞密度と相関し、1次油胞が多いほど、側壁膜の硬度は低いといえました。

 同時期に売られていた貯蔵青島温州の側壁膜の硬度が、細胞幅が狭いほど高かったのに対して、アフォーラでは、細胞幅が広いほど高いという真逆の結果となりました。このことから、側壁膜の硬度の高低には、単に膜が薄いかどうか、また、構成細胞が太いかどうかに加え、細胞間隙に沈着しているセルロース、ペクチンなどの肥厚物質が関与していることを推定できました。

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平成のカンキツ輸入の動向
boeki船

 自由貿易に異を唱えるトランプ大統領の誕生で、これまでのアメリカからの貿易自由化の流れが変わるのでしょうか。門戸を開いた日本では、豆類、麦類など多くの農産物の自給率が、すでに著しく低下し、輸入依存の農業生産体質に変質しました。カンキツは、バナナ、リンゴと同じく、貿易に適した農産物ですので、アメリカとの交渉で、1964年(昭和39)のレモンの自由化を皮切りに、1971年(昭和46)にはグレープフルーツを、1991年(平成3)にはオレンジの自由化となり、その後はすべてのカンキツが完全なフリーマーケットのもとにあります。そこで、平成になってからの、国産カンキツ対輸入カンキツのマーケットでの興亡について、その顛末をみてみました。

boeki輸入カンキツ

1)カンキツの自給率の変化
 日本のカンキツのマーケット量は、平成9年に209万トンほどありました。このときの国産カンキツの出荷量は、152万トンで、あとは輸入カンキツの57万トンで賄われました。73%の自給率でした。これが、17年後の平成26年には、国産カンキツの出荷量は106万トン、輸入カンキツは25万トンとなり、131万トン市場に縮小しました。しかし、両者の目減り具合の違いで、自給率は81%に拡大したことになりました。ここ10年くらいは、国産カンキツの出荷量が100万トン程度に安定していましたので、輸入カンキツ量の低下が、自給率の向上に影響したことになりました。カンキツ貿易の多くが、対アメリカでしたので、アメリカのカンキツ生産の不振が、このような結果となっていました。
 日本のカンキツのマーケットは、世界諸国にとって極めて魅力ある輸出先になっています。これからも、外圧にさらされたマーケットですが、消費者に愛されるカンキツの生産に努め、マーケットを守っていく必要があるでしょう。

boeki自給率

2)輸入量の低下した品種
 輸入カンキツで、著しく低下した品種はグレープフルーツとレモンでした。グレープフルーツの輸入量は、平成9年には28.4万トンでしたが、平成27年には10万トンに減少しました。これには、フロリダのグリーニング被害(参照:既ブログ記事、アメリカのカンキツ生産が危ない、17/03/21)や、南アフリカ産の品質の悪さへの消費者離れがあったと思われます。これまでに、輸入量が半減しましたレモンについては、加州の気象災害での生産不振があったものと思われます。マンダリンについては、ウンシュウミカンとの競合で、いまだ凌駕する輸入カンキツ品種が、育成されていないものと思われます。宮川早生、青島温州などの国際競争力の強さを、知らされる結果となっています。

boeki国産

3)国産カンキツの出荷量
 ウンシュウミカンの出荷量は、隔年結果の影響で年次変動がみられたものの、大体80万トンのマーケットとして安定したものでした。また、その他の国産カンキツの出荷量は、平成の初期は14-15万トンのマーケットにあったものが、平成18年からは、28-32万トンのマーケットに拡大しております。
 この理由として、清見ファミリーの品種群(不知火・デコポン、清見、はるみ、紅まどんな、せとか、麗江など)への消費需要の増大が挙げられるでしょう。海外とは全く異なったカンキツ品種構成のマーケットができつつあり、来日した観光客を驚かせています。

boeki清見ファミリ

 農産物の中で、近年自給率を延ばしているアイテムは少ないものですが、カンキツに限ってはこのような状況になっていて、心強いものがあります。さらに、輸出できるほどの荷がまとまるようになるといいのですが、今後に期待しましょう。そのためにも、外圧に負けない体質を持つ産地つくりを目指して、カンキツの生産基盤の強化(とくにグリーニングには注意)に努めましょう。
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青島温州貯蔵果実の側壁膜の硬さを測る
aosimatyo果実
 
貯蔵技術の向上で、晩生性の青島温州が4月に入ってもマーケットを潤していました。香川県産の青島温州が4月17日に手に入りましたので、1月7日の静岡県産の青島温州と比較して、果実側壁膜の硬度の違いがどの程度異なるかみてみました。

aosimatyo硬度

1)側壁膜の硬度の比較
 貯蔵した果実の側壁膜の硬度は、平均で3.88kg/cm2ありました。静岡産の3.57kg/cm2より硬く、硬さが増加していました。2㎏から5㎏程度の範囲にありました。すべて袋ごと呑み込むのは困難でした。呑み込み易さには、早生温州のように1kg/cm2以下の膜硬度をもつ必要がありました。

aosimatyo形質相関

2) 側壁膜の硬度と果実形質との相関
 側壁膜は、果実の形質の一つですので、膜硬度とその他の形質とのあいだの相関関係を求めてみました。その結果、膜硬度はほとんどの形質と相関関係にありませんでした。ただ、果皮の1次油胞の密度とは、やや高い相関係数値がみられました。

aosimatyo解剖相関
aosimatyo貯蔵青島膜

3)側壁膜の硬度と側壁膜組織構造との相関
 側壁膜の硬さと、側壁膜の厚さや棒状細胞の幅との相関係数を求めてみました。その結果は、側壁膜の硬度は側壁膜の厚さとの相関関係は弱かったものの、棒状細胞の幅とは負の高い相関関係にありました。棒状細胞の幅は、細胞の幅と細胞外のペクチンやセルロースなどの肥厚物質の幅が関係していると思われますので、棒状細胞が太いか、肥厚の少ない側壁膜ほど、低い硬度を示したといえそうでした。

aosimatyo糖ベシ
aosimatyo貯蔵糖

4)貯蔵後の袋内の糖濃度の勾配
 普通、収穫期の果実袋の糖濃度の勾配は、ベシクルが頂部にあるほど高く、甘くなっています。貯蔵した果実では、とくに長柄ベシクルでみられましたが、このような勾配が崩れていることが分かりました。貯蔵後にみられた側壁膜の硬度の上昇は、この長柄ベシクル糖の転流があり、棒状細胞の肥厚物質の生成に向けられた結果ではないかと思われました。貯蔵果実には、肥厚物質が多く、側壁膜の硬さを増強したと推定されました。

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