キトロロギストXの記録
激しく変化する昨今のもとで一生をカンキツ研究に捧げてきた老学者の独白を広く一般のカンキツ愛好家(キトロロマニア)に聞いていただきたくブログを開設しました。お閑な時にどうぞ目を通してください。
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手のひらサイズの果実を求めて
tenohira世界果実生産
tenohira-サイズ

 最近のFAO統計(2015)によりますと、世界の果実生産量は6億3654万トンに達したようです。カンキツ、スイカ、バナナ、リンゴ、ブドウだけで、その75%を占めています。しかし、世界には、2792種類もの果実がありますので、熱帯果実などの果実貿易が活発になると、これからは多彩な種類への需要が広がるものと思われます。また、これからの果実に対して、新たな研究開発が必須となり、とくに、モノづくりの巧みな日本に求められることでしょう。
 果実開発の方向として、美味い果実をつくるということがありますが、手頃な階級(grading)の 果実をマーケティングに乗せることも、とても大事なような気がしています。消費者に手頃の大きさの果実を提供することです。日本には、手のひらサイズという便利な言葉がありますが、大きさが果径10㎝位で、重さが100-250g位が手頃であり、消費者のほしい生果の大きさでしょう。果実の大きさを調べてみました。

tenohira種類代

1)果実の大きさの種類間差
 世界で最大の果実は、ジャイアンツカボチャ(Atlantic Giant)ですが、商品果実ではジャックフルーツでして、50㎏にも達します。その他、サワーサップ、ドリアン、パパイヤなどが大きい果実です。これら多くの熱帯果実は、手のひらサイズをはるかに超える果大です。かつての現地での感想では、オレンジやミカン位の大きさはないものか、ということでした。果実の大きさは遺伝形質ですので、現地で、遺伝資源を広く探し求めたものでした。

tenohiraカンキツ

2)果実の大きさの適大品種
 ミカン、リンゴ、ナシ、モモ、カキなどおなじみの果実は、ほとんどが手のひらサイズです。消費者にとって、手で持てることが、生果食欲の基本なのでしょう。しかし、遺伝資源として集められた果実の大きさの変異幅をみますと、種類によって相当違いがあります。例えば、カンキツのコレクション51品種の果大性を比較しますと、手のひらサイズの果実を持つ品種は、30%でした。最大の大きさは、ブンタンの晩白柚で2kgありました。

tenohiraジャックフルーツ
tenohiraマンゴー

3)果実の大きさの超大品種
 ジャックフルーツなど熱帯果実は、すべて1kgを超える大きさでした。そして、それぞれの遺伝資源には、適大品種はありませんでした。さきごろ、宮崎産のマンゴーが、銀座の青果店で1個2万円で売られていました。600g位の大果でした。マンゴーに、手のひらサイズの品種はないものか、79品種について調べました。重さの変異幅は、200gから最大のアンダーソン品種1800gでした。手のひらサイズの品種割合は、わずかに4%でした。ミリカやカラバオなどの小型マンゴー品種の改良が、これからは必要なようでした。

tenohiraブドウ
tenohiraブドウ小売り

4)果実の大きさの過小品種
 ブドー、ブルーベリー、アンズ、アセロラ、ヤマモモ、レイシ,ランサーなど小型果実種の遺伝資源を調べました。例えば、ブドウの188品種では、果重の変異幅は0.3gから最大の藤稔24gでした。しかし、ミカンの大きさの100gに達するブドウ品種はありませんでした。
 近年、生食用ブドウの消費傾向は、ピオーネ、高尾、巨峰、藤稔などの4倍性ゲノムをもつ大粒品種に人気があります。さらに、藤稔のジベレリンとサイトカイニン処理による栽培法の開発では、40gをこえる大果生産が確立しました。こうなると、ブドウでは房売りから、果実の個売りへと販売形態にイノベーションが起こることでしょう。
 
 果大性をコントロールする技術革新をとげて、手のひらサイズの果実の流通を図りましょう。そのためには、豊富な遺伝子プールをつくり、育種技術と栽培技術との連携による研究開発が、とても大切なようです。

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オアマンダリンの果肉ベシクル細胞の生体染色
orsome果実6個

 イスラエル生まれのオアマンダリンの果肉には、小さなベシクルが、みかんの数の倍以上含まれていました。この小さなベシクルが、外液の糖をどのように吸収するか、また、ニュートラルレッド(NR)色素にどのような染色性を示すか、浸透生理を調べました。

orsome濃淡ベシクル
orsome糖度

1)ベシクルの外液糖の吸収性とNR染色性
 蔗糖を0%、10%、20%、30%含むNR液に、果肉の長柄ベシクル各50個を浸漬しました。そして、24時間後に染色具合をみましたところ、いずれの糖度でも、全体に染まっていないベシクルと、全身が薄赤色に染まったベシクルがみられました。そこで、NRの浸透の遅かった淡ベシクルと、やや浸透した濃ベシクルの2群に分けて、ベシクルの重さの変化と糖度の変化を、1日後に測定しました。その結果、ベシクルの重さでも、糖度でも、両群に大きな違いがみられました。24時間たっても、糖の吸収途上と理解されました。
 また、着色したベシクルの内部を解剖観察しましたところ、中央部の容積の大きなベシクル細胞は、染色されていませんでした。

orsomeベシ重

orsome30%2

2)ベシクル細胞の染色性
 そこで、ベシクル中央部だけを摘出して、上のようなシリーズのNR液に組織染色しましたところ、1時間以内に、どの糖度でも、ベシクル細胞が速やかに染色されました。細胞壁は赤色に、細胞質は薄赤にNR色素で染め分けられ、外液に対する細胞質の反応が、観察できるようになりました。そして、原形質分離は、30%糖液の場合に顕著に認められました。細胞の小さな先端部や、周辺部では、原形質分離は明らかでありませんでした。
 
orsome表皮ベシ

 この結果から、オアマンダリンのベシクルの中央部にみられる大きな液胞を持つ細胞は、30%糖度の20気圧以上の高い浸透圧でも、細胞壁の形を維持していることがわかりました。中央のベシクルが周辺部の小さくて細い細胞で保護されているばかりでなく、ベシクル細胞壁そのものの浸透圧耐性も高いことが判明しました。ベシクルの細胞壁の性質の違いは、品種間に相当みられるようでした。
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カンキツ果実の可食部分はどのくらいありますか
kanikukan店棚

 カンキツの多くは、皮をむいて、じょうのうという袋をむいて、さらに、しゃじょうという粒々のベシクルを食します。時として、袋の膜が柔らかい場合には、袋ごと口にほおばります。種は食べられません。この摂食動作がスムースな果実ほど、ヒトに満足感を与えられます。カンキツの種類によって、この食べられる可食部分と可食割合がどのくらいあるか、比較してみました。

kanikukan晩かん

1)在来品種
 マーケットで手に入った13種類の果実の果重とベシクル重を測定し、可食割合を求めました。その結果、可食割合の最も低かった獅子柚が30%であり、最も高かったグレープフルーツが67%でした。日本の大衆果実のウンシュウミカンは70%前後で、また、袋ごと食べられるハウスみかんが92%前後ありました。売れ行きの良いミカンの可食割合の高さをみますと、これが消費者にいかにフレンドリーであるかうかがわれました。

kanikukan外国交雑
kanikukanアフォーラ4面

2)外国育成品種
 輸入品として店頭に並んでいた6種類の果実の可食割合を、比較しました。可食割合は、ほとんどが70-80%の範囲にあり、とくに、アフォーラマンダリン(Wマーコット)の高さが目につきました。皮も剥き易く、食べやすい果実であり、時期が限られていますが、スーパー売り場では人気があります。

kanikukan交雑種
kanikukan交雑5新品種

3)国産育成品種
 店頭に並んでいた12種類の果実の可食割合を、比較しました。可食割合は、70-80%の範囲にありました。特に売れゆきの良い、天草、紅まどんな、せとか、甘平、不知火(デコポン)は80%前後の高い可食割合を持っていました。

 おいしい、手頃な大きさ果実などは、カンキツの育種目的や栽培目標であります。カンキツの食べやすさ、リーズナブルな値段に加えて、可食部分とその割合が、購入の決め手になりつつあります。皮をどこに捨てましょう’、’袋ごと食べたい”、消費者マインドからの新しいカンキツの評価点です。
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果実の可食割合はどのくらいありますか
kanikurui-熱帯果実

 果実は果皮、果肉、種から成り立っています。どこを食べているかといいますと、果実の種類で異なります。キンカンは果皮と果肉をたべますし、キウイフルーツは1000個以上もある種まで、果肉とともに食べています。普通、果実の食べているところを、可食部分(edible portion)といいますが、はたして果物の種類で、可食割合はどの程度の違いがあるのでしょう。
 消費者にとっては、可食割合が高く、可食部分の大きい果物ほど食べごたえがあります。また、都会のヒトにとっては、食べた後の廃棄部分が多いほど、処分に困ったことになります。そこで、マーケットに流通しているいろいろな果物を使って、果実の可食割合を比較してみました。

kanikurui温帯果実

1)温帯果実
 25種類の温帯果樹の果実重と、可食部分の重さを測定し、可食割合%を比較しました。その際、カンキツやザクロなど皮の剥き易い果実は別として、多くはナイフで丁寧に果皮部分を剥きました。その結果、可食割合は最も悪かったザクロの24%から、最もよかったラズベリの95%と大きな違いのあることを知りました。ナシ、モモ、カキ、キウイフルーツは80%前後という高い可食割合を持ち、しかも、果肉量も適度に多く、食べごたえのある手頃な果物と評されました。

kanikurui熱帯果実

2)熱帯果実
 19種類の熱帯果樹の果実可食割合を測定しました。その結果、可食割合は最も悪かったマンゴスチンの24%から、最もよかったレンブの95%と大きな違いがありました。スターフルーツ、グワバ、レンブは90%前後の可食割合を持ち、しかも、可食部分の適度に多い、食べごたえのある手頃な果実として評されました。

kanikurui温帯果実類

 温帯果実と熱帯果実の可食割合の比較では、前者の小果実が高い可食割合をみせたのに対して、後者では低い割合となっていました。熱帯果樹では、可食割合が高く、手のひらサイズのヒトにやさしい果物としての資質が充分でなく、さらに改良を必要としているようでした。

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植物細胞間の物質の移動
 ido-新モデル転流

 維管束のないカンキツ果肉のベシクルでは、細胞から細胞へのしょ糖の移動が、細胞と細胞を結んでいるチューブ状の原形質連絡糸を通って移動する、いわゆる、シンプラスチック移動をみせることを、先に述べました。一方、ニュートラルレッド色素は、細胞外の細胞壁と細胞間隙を伝って移動する、いわゆる、アポプラスチック移動が主でありました。そこで、最近の生化学や電子顕微鏡的研究を参考にして、これらの経路の微細構造をみてみました。

ido新細胞膜モデル
ido新大ミカン膜電顕

1)シンプラスチック移動
 高等生物の細胞膜の構造は、アメリカのシンガ―とニコルソンの提案した流動モザイクモデル(1972)に準拠して考えられています。膜は、極性脂質の二重層からなり、膜には、いろいろな役割を持った酵素などのタンパク質構造体を座有、あるいは層内に多数有しています。タンパク質構造体は、酵素のほかに、イオンなどを通すチャンネル機能、糖などを通すキャリヤ機能、イオンやプロトンをくみ出すポンプ機能を持つ別々の種類となっています。
 このように、タンパク質構造体の発見は、従来考えられていた細胞膜のイメージとは、相当複雑になってきました。また、細胞膜を含むあらゆるその他の生体膜(液胞のトノプラスト、ミトコンドリア膜、葉緑体膜、その他多くの膜があります)は、このような基本的構造をしているものと理解されています。 
 したがって、ミカンのベシクル細胞では、糖は細胞膜のキャリアを通りぬけて細胞質に入り、さらにチューブ状の原形質連絡糸で次の細胞質に達して、新しい細胞質に浸透すると理解できます。また、その時のエネルギーは、一つは浸透圧ポテンシャルの拡散であり(受動輸送)、一つはATPエネルギーを使ったポンプのプロトン(能動輸送)ということになります。カンキツのベシクルの場合、液胞の発達した中央の巨大細胞が、浸透圧調整役を担っているものと理解されます。また、糖の浸透速度は品種によって相当異なりましたので、今後は、細胞膜や液胞膜の構造を、さらに微細に研究する必要がありそうです。

ido新細胞壁モデル
ido新ペクチン化学式

2)アポプラスチック移動
 一般に、植物細胞の1次の細胞壁は、細胞膜座上のセルロース合成酵素の働きで、①ミクロフイブリとして生み出されるセルロースと、②オルガネラのゴルジ体で合成され、細胞膜のチャンネルから細胞外に出されるヘミセルロースと、③ペクチンからできています。(その他、最近はある種のタンパク粒の存在が知られるようになりました)
 ミカン果肉の測定例では、果肉100gにペクチン1.88g、ヘミセルロース0.22g、セルロース0.04g、2次の細胞壁に多いリグニン0.03gが検出されていて、果実としてはペクチン量の多いのが特徴といえます。ペクチンは、α-D-ガラクツロン酸メチルエステル残基を基本単位に、数十万の分子量となった鎖状の多糖類で、セルロースとともに組織に硬度を与えています。また、その粘性が食感に強く影響する物質です。ペクチンは、砂糖を加えてジャムを作るので、よく知られた物質です。生細胞のペクチン質は、細胞壁の中葉部や内層部など部位によって、相当複雑な化学構造の違いをみせています。
ido新細胞間隙
ido新原形質分離

 また、一般に、植物組織には、多かれ少なかれ細胞間隙がみられます。また、時には原形質分離した場合の細胞膜内の空間も生じます。果実は、細胞間隙の容積が大きく、成熟したミカンでは数%の空間容積を占めました。細胞間隙には、空気ばかりでなく、水の充満しているところも見られましたので、物質の間隙移動も考慮する必要があります。色素の移動は、細胞壁ばかりでなく細胞間隙も移動して、アポプラスチックになされると考えてよさそうです。

 このように、細胞から細胞へとの物質移動には、物質の種類で選択的な経路がとられていますので、イオンやホルモンなど他の様々な物質についても、さらなる調査が必要のようです。
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