キトロロギストXの記録
激しく変化する昨今のもとで一生をカンキツ研究に捧げてきた老学者の独白を広く一般のカンキツ愛好家(キトロロマニア)に聞いていただきたくブログを開設しました。お閑な時にどうぞ目を通してください。
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パール柑のベシクル細胞の生体染色
parusome中央細胞大

 パール柑(正式名;オオタチバナ)はブンタンの一品種で、直径300ミクロン程度の大きなベシクル細胞を、ベシクルの中央部に持ちます。生のベシクルを、ニュートラルレッド(NR)色素で染色した時の染色具合を観察しました。

parusome染め分け
parusome糖度
parusome重さ

1)ベシクルの染色性
 蔗糖を0%、10%、20%、30%含むNR液に、果肉の長柄ベシクル各50個を浸漬しました。そして、24時間後に染色具合をみましたところ、いずれの糖度区でも、全体に染まっていないベシクルと、全身が桃色に染まったベシクルがみられました。そこで、NRの浸透の遅かった淡ベシクルと、やや浸透した濃ベシクルの2群に分けて、ベシクルの重さの変化と糖度の変化を、測定しました。その結果、ベシクルの重さ、糖度いずれでも、両群に大きな違いがみられました。
 また、着色したベシクルの内部を解剖観察しましたところ、中央部の容積の大きなベシクル細胞は、染色されていませんでした。24時間たっても、色素は中央部まで、浸透到達しなかったと思われます。

parusomeベシ染め

2)ベシクル細胞の染色性
 そこで、ベシクル周辺部の影響を避けるために中央部だけを摘出して、上のような糖濃度シリーズのNR液で組織染色しましたところ、1時間以内に、ベシクル細胞が速やかに染色されました。細胞壁は赤色に、細胞質は黄色にNR染剤で染め分けられ、外液に対する細胞質の反応が、観察できるようになりました。そして、原形質分離が、30%糖液の場合に顕著に認められました。
 
parusome表面細胞
parusome先端部

 この結果から、パール柑ベシクルの大きな液胞を持つ中央部の細胞は、30%糖度の、または、20気圧以上の高い浸透圧でも、その形を維持していることになりました。ベシクルが周辺部の細い棒状細胞で保護されているばかりでなく、中央部ベシクル細胞そのものの浸透圧耐性も高いことが判明しました。他の品種と比較して、ベシクルの細胞壁の性質の違いが、このような強い耐性を齎しているものと推定されました。
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