キトロロギストXの記録
激しく変化する昨今のもとで一生をカンキツ研究に捧げてきた老学者の独白を広く一般のカンキツ愛好家(キトロロマニア)に聞いていただきたくブログを開設しました。お閑な時にどうぞ目を通してください。
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植物細胞間の物質の移動
 ido-新モデル転流

 維管束のないカンキツ果肉のベシクルでは、細胞から細胞へのしょ糖の移動が、細胞と細胞を結んでいるチューブ状の原形質連絡糸を通って移動する、いわゆる、シンプラスチック移動をみせることを、先に述べました。一方、ニュートラルレッド色素は、細胞外の細胞壁と細胞間隙を伝って移動する、いわゆる、アポプラスチック移動が主でありました。そこで、最近の生化学や電子顕微鏡的研究を参考にして、これらの経路の微細構造をみてみました。

ido新細胞膜モデル
ido新大ミカン膜電顕

1)シンプラスチック移動
 高等生物の細胞膜の構造は、アメリカのシンガ―とニコルソンの提案した流動モザイクモデル(1972)に準拠して考えられています。膜は、極性脂質の二重層からなり、膜には、いろいろな役割を持った酵素などのタンパク質構造体を座有、あるいは層内に多数有しています。タンパク質構造体は、酵素のほかに、イオンなどを通すチャンネル機能、糖などを通すキャリヤ機能、イオンやプロトンをくみ出すポンプ機能を持つ別々の種類となっています。
 このように、タンパク質構造体の発見は、従来考えられていた細胞膜のイメージとは、相当複雑になってきました。また、細胞膜を含むあらゆるその他の生体膜(液胞のトノプラスト、ミトコンドリア膜、葉緑体膜、その他多くの膜があります)は、このような基本的構造をしているものと理解されています。 
 したがって、ミカンのベシクル細胞では、糖は細胞膜のキャリアを通りぬけて細胞質に入り、さらにチューブ状の原形質連絡糸で次の細胞質に達して、新しい細胞質に浸透すると理解できます。また、その時のエネルギーは、一つは浸透圧ポテンシャルの拡散であり(受動輸送)、一つはATPエネルギーを使ったポンプのプロトン(能動輸送)ということになります。カンキツのベシクルの場合、液胞の発達した中央の巨大細胞が、浸透圧調整役を担っているものと理解されます。また、糖の浸透速度は品種によって相当異なりましたので、今後は、細胞膜や液胞膜の構造を、さらに微細に研究する必要がありそうです。

ido新細胞壁モデル
ido新ペクチン化学式

2)アポプラスチック移動
 一般に、植物細胞の1次の細胞壁は、細胞膜座上のセルロース合成酵素の働きで、①ミクロフイブリとして生み出されるセルロースと、②オルガネラのゴルジ体で合成され、細胞膜のチャンネルから細胞外に出されるヘミセルロースと、③ペクチンからできています。(その他、最近はある種のタンパク粒の存在が知られるようになりました)
 ミカン果肉の測定例では、果肉100gにペクチン1.88g、ヘミセルロース0.22g、セルロース0.04g、2次の細胞壁に多いリグニン0.03gが検出されていて、果実としてはペクチン量の多いのが特徴といえます。ペクチンは、α-D-ガラクツロン酸メチルエステル残基を基本単位に、数十万の分子量となった鎖状の多糖類で、セルロースとともに組織に硬度を与えています。また、その粘性が食感に強く影響する物質です。ペクチンは、砂糖を加えてジャムを作るので、よく知られた物質です。生細胞のペクチン質は、細胞壁の中葉部や内層部など部位によって、相当複雑な化学構造の違いをみせています。
ido新細胞間隙
ido新原形質分離

 また、一般に、植物組織には、多かれ少なかれ細胞間隙がみられます。また、時には原形質分離した場合の細胞膜内の空間も生じます。果実は、細胞間隙の容積が大きく、成熟したミカンでは数%の空間容積を占めました。細胞間隙には、空気ばかりでなく、水の充満しているところも見られましたので、物質の間隙移動も考慮する必要があります。色素の移動は、細胞壁ばかりでなく細胞間隙も移動して、アポプラスチックになされると考えてよさそうです。

 このように、細胞から細胞へとの物質移動には、物質の種類で選択的な経路がとられていますので、イオンやホルモンなど他の様々な物質についても、さらなる調査が必要のようです。
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