キトロロギストXの記録
激しく変化する昨今のもとで一生をカンキツ研究に捧げてきた老学者の独白を広く一般のカンキツ愛好家(キトロロマニア)に聞いていただきたくブログを開設しました。お閑な時にどうぞ目を通してください。
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果肉のカルシウムはどのくらいありますか
 カルシウムは、ヒトの骨の成分として、必要不可欠なミネラルでしょう。年を取ると、骨からカルシウムが溶け出し、どなたでも骨粗しょうで悩まされています。植物にとっても、カルシウムは大切な成分で、構成成分として窒素に次いで多く、しかも、樹齢が増すほど蓄積して堅さをつくる大切なミネラルです。したがって、果樹栽培では、カルシウム肥料(過リン酸石灰、消石灰、苦土石灰など)の施用が、窒素、リン酸、カリ肥料についで必須になっています。
カンキツの場合は、秋口の葉に、灰分100gあたりに3から4g含まれると、良好な肥効状態にあると診断されます。カルシウムが不足しますと、葉が小さく厚くなり、葉縁は黄ばんできます。さらにひどくなると、小枝の枯れ込みが顕著になります。
 体内のカルシウムの大移動は、導管を蒸散流にのってみられますが(ローデイング)、しかし、篩管でのカルシウムの移動はないことが知られています。したがって、蒸散の少ない芽や果実での移動は、少ないものと理解されます。そこで、導管の維管束系に乏しい、果肉のカルシウムの動態について、2,3の知見を紹介します。

calcium欠乏葉

calcium果実
calciumカルシウ種間

1)果肉のカルシウム濃度の種類間差
 果肉のカルシウム含量は、湿式灰化試料で滴定法で測定されます。従来のデータをまとめてみますと、ほとんどの果肉に、生重(新鮮重)100gあたり1から30mg含まれていました。ただし、ナッツ類は100から200mgと多く含まれていました。生肉として最も多かったのはドリアンで、50mgありました。カルシウムは、果肉より果皮に多く含まれるのが一般的ですが、果皮果肉ともに食べているキンカンは多く含み、75mgありました。ヒトにとって、果実はカルシウム食品といわれていませんが、ナッツ類やドライフルーツは、Caリッチ食品と認められそうです。

calcium分布

2)細胞でのカルシウムの所在
 果肉の水抽出では、カリウムほどではありませんが、カルシウムが検出されますので、イオン状態Ca2+の存在が推定されます。しかし、ほとんどのカルシウムは、細胞壁とくに中葉(middle lamella)のペクチンと結合し、ペクチン酸カルシウム(カルシウムペクテート)として存在し、膜に弾性を与えています。そこで、イオン状態のCaをもとめて、オスミウムとピロアンチモン酸カリウムの混合液で果肉を染めて、アンチモネートカルシウムの結晶をつくり、遊離Caを電子顕微鏡で観察しました。
 その結果、果肉細胞間に大きな違いがみられましたが、結晶はすべて液胞にあり、とくに、液胞膜トノプラストには、数珠状に多数座上していることが、明らかになりました。おそらく、トノプラストのポンプの位置にあたるものと思われました。一方、カルシウムが多量に所在すると思われる、細胞壁や中葉には結晶がみられなかったことから、これらの部位でのカルシウムの結合型形態の所在を確認できました。
 
calcium周囲中


3)果肉のカルシウム濃度を変化させる
 カルシウムは、一般に、体内再移動の難しいイオンとされていますが、果肉ではどうでしょう。そこで、果肉のカルシウム濃度が、果実の温湯処理で変化するか否か、検討しました。通常、温湯処理は果実の消毒のために行われますが、53℃に10から20分浸漬しました。数日後に、果肉のカルシウム濃度を測定したところ、バナナ、マンゴー、スターフルーツは増大していました。しかし、ミカンでは、減少していました。したがって、前者では、果皮からのカルシウムの補給が、後者では、果肉からのカルシウムの溶脱があったことが分かりました。
 またその際、果肉の周辺部と中央部の部位間での、カルシウム濃度の変化をみましたところ、マンゴー果肉で、周辺部から中央部への移動が確認されました。果肉では、難移動性とみられたカルシウムも、熱刺激に 速やかに反応していました。  
 関連記事: カンキツのカルシウムの動態。 12/04/24

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