キトロロギストXの記録
激しく変化する昨今のもとで一生をカンキツ研究に捧げてきた老学者の独白を広く一般のカンキツ愛好家(キトロロマニア)に聞いていただきたくブログを開設しました。お閑な時にどうぞ目を通してください。
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果肉の発達由来をたずねると
yurai花の模式図

 果肉とは、果実の可食部を指します。果肉の細胞は、ほとんどが柔細胞ですが、極めて肥大した場合(hypertrophy )や、過剰に多い場合(hyperplasia)など、特殊化しています。このような果肉細胞が、花のどの組織部分に分化して由来するかは、果樹の種類によって異なります。通常、果肉細胞が、花の子房の組織部分に分化する果実を真果(true fruit)といい、子房以外の組織部分に分化する果実を偽果(accessory or false fruit)と呼んでいます。どのように異なっているか、ご紹介します。

yurai由来細胞
yuraiカキ
yuraiバナナ
yuraiスターフルーツ

1)真果
 現在、果樹の種類は2792種ほど知られています(田中長三郎、1951)。これらのうちで、果肉細胞が子房の組織に分化する種類が最も多く、中でも、子房壁にあたる場合が多くみられます。さらに、子房壁は、外層(外果皮)、中層(中果皮)、内層(内果皮)にわかれて果肉の発達をみせます。外果皮が可食部になる種類に、キウイフルーツなどがあげられます。中果皮が可食部になる種類は多く、モモ、カキ、ブドウ、バナナ、アボカド、スターフルーツなどがあげられます。また、内果皮が可食部になる種類に、カンキツなどがあります。

 カンキツの場合は、外果皮がフラべド、中果皮がアルべド、内果皮が袋にあたるじょうのうになります。しかし、さきに明らかにしましたように、果肉は袋の中のベシクル(しゃじょう)であり、ベシクルは内層の表皮の細胞から分化しています。果肉細胞は表皮細胞由来ということになります。注目すべきことは、他の果実の果肉細胞が永久組織にあたるのに対して、長柄ベシクルの先端部の細胞は、いつまでも細胞分裂能力を保持していていますので、どちらかというと分裂組織にあたります。カンキツは内果皮由来といっても、内層の表皮由来だと注釈を必要とする種類といえそうです。

2)偽果
 果肉細胞が、子房以外の組織に由来するいわゆる偽果として、胎座由来のリンゴ、イチゴ、ビワなどがあります。また、花柄由来のイチジク、パイナップルなどがあげられます。

yuraiドリアン
yurai-クルミ

 これらと違い、種子の組織が可食部になった果実もあります。クリは種子の子葉を、マンゴスチン、ドリアンは種皮を、ハーゼルナッツ、クルミ、ピスタチオなどは胚を食することになりますが、種子の場合、果肉細胞の性質は、デンプンの蓄積など、液胞のよく発達している他の果実とは異なっています。

yurai心皮子房

 そもそも、子房は、葉状の心皮が向軸面を内側に巻き込んで、葉縁に胚珠を分化して進化したものと考えられています。そして、心皮が1枚関わった場合、種子1個のモモのように、接着部分が縫合線としてみられます。ブドウは2枚の心皮が関わり、4つの胚珠を持ちます。カキでは4枚の心皮が関わったとみられ、心室が8室に分かれています。また、カンキツは種類によって、3枚から25枚位に変異に富み、さらに、種子の数が、枚数が多いほど多くみられます。キウイフルーツでは、さらに多くの心皮の融合で心室が形成されていて、1000粒を超える種子を保持しています。果実は心皮の融合で発達してきたといえます。

 果実は、種子に栄養を与えるために進化してきたと、従来、教えられてきました。しかし、上のように多様な組織由来を示す果肉細胞の多様な進化のあとをみますと、果実は自らのポストハーベスト寿命を延ばすために進化しており、結果として、種子の拡散に貢献してきたように推論できます。胚珠から種子に発育する過程でみられる、胚乳と胚との密接な養育関係は、果実と種子の間にはなさそうです。
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