キトロロギストXの記録
激しく変化する昨今のもとで一生をカンキツ研究に捧げてきた老学者の独白を広く一般のカンキツ愛好家(キトロロマニア)に聞いていただきたくブログを開設しました。お閑な時にどうぞ目を通してください。
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シーボルトとみかん
sieboltシイボルト

 江戸東京博物館で、「よみがえれ! シーボルトの日本博物館」の展覧会(2016年9月13日~11月06日)が開催されていました。シーボルト(P.F.Siebolt, 1796-1866)の果たせなかった思いをくんで、江戸東京博物館の皆さんが、主としてミュンヘン五大陸博物館やフォン.・ブランデンシュタイン=ツエッペリン家所蔵のシーボルトゆかりの品々を展示してくださっています。

siebolt帆船

< シーボルトは、鎖国中の江戸時代に、オランダ東インド会社の外科軍医として、27歳の若さで長崎商館に館長の身分で赴任しました(1823年)。そして、1829年にシーボルト事件で日本を追放されるまでの6年間に、蘭学、西洋医療の普及に努め、多くの門下生を育てました。また、前任者の「日本植物誌」(1784年)を著したツンベルグ(高祖リンネの弟子)の後をついで、日本の動植物のコレクションを行い、帰国後に「日本」、「日本動物誌」、「日本植物誌」を著し、日本の自然、文化情報を広く欧州に紹介しました。

 シーボルトの持ち帰った植物のミカイドウ、ツバキ、ギボウシなどいくつかは、欧州の各所の植物園や野外で、今でもみることができます。これらのことは日本が門戸を開くペリー来航の1853年、1854年の以前の出来事でした。また、1858年には、日蘭修好条約が締結され、シーボルトは再び来日していますが、70歳(1866)の生涯を日本ラブで終生過ごしたことは、歴史上よく知られ、日本の偉大な恩人となりました。

 今回の展覧会には、動植物の情報は少なかったのですが、ツエッペリン家所蔵の資料に、シーボルトに同行した助手のハインリヒ・ビュルガーが、1827年に記載した有用植物一覧表が、展示してありました。収集した447種のうち、カンキツが9種あり、当時の学名等で記載されていて、興味を引きました。それらは、以下のとおりでした。

1827年 H.ヒュルガー記載種
1.海紅柑 ジャガタラミカン Citrus decumana DC.Ku    
2.朱欒  ジャガタラユ   Citrus tomikan Jap.
3.香欒  トウクネンポ   Citrus sabon Sieb.
4.回青橙 ダイダイ     Citrus daidai Sieb.
5.柚   ユズ       C.medica variet.B.junos Sieb.
6 柑   ミカン      Citrus nobilis DC.Z.
7.香橙  クネンポ     Citrus kunep Japan
8.金橘  キンカン     Citrus japanica Th..
9.金棗  トウキンカン   Citrus margarita DC  

現在の園芸種の扱いとして、これらを同定してみますと、以下のようになりました。
1.イグロットレモン Citrus truncata Hort.ex Tanaka (1938)
2.獅子ユズ     C. pseudogulgul Hort.ex Shirai  (1933)
3.スイザボン    C. suizabon Hort.ex Y. Tanaka (1940)
4.ダイダイ     C. aurantium Linn. (1753)
5.ユズ       C. junos Roureiro (1793)
6.ウンシュウミカン C. unshiu Marcovitch (1921)
7.クネンボ     C. nobilis Roureiro (1793)
8.丸金柑 Fortunella japonica Swingle (1915)
9.長金柑 F. margarita Swingle (1915)

 シーボルトの記録したカンキツは、今でも長崎、熊本、鹿児島に分布しておりますが、主とした探索地域だったと思われます。そして、これらの種類は、明治以降の世界的な探索で、殆ど新種性を失ってしまい、シーボルト命名の種類は、カンキツ分類学上では残されていません。
siebolt押し葉
siebolt長島

 残念だったのは、日本のウンシュウミカンの新種性を、最も早く欧州に広めたのにかかわらず、明治以降ソビエト学者に命名権が移ったことだったと思います。シーボルトは、ウンシュウミカンを薩摩の長島で採取調査し、Citrus nobilis DC. var.nagashima Sieb.(1830)と命名していました。のちに、シーボルトの持ち帰ったNagashimaとしたおし葉標本を、田中長三郎さんが現地(ライデン国立植物標本館)で調べましたところ、ウンシュウミカンであったことが確かめられています。因みに、鹿児島県の長島は、ウンシュウミカンの発祥の地だったのでした。
 シーボルトは、晩年、自らのコレクションをもとに、故郷のミュンヘンあたりに日本博物館の設立を構想していたとのことで、今回の展示品の多さに、江戸東京博物館の皆さんのシーボルトへの思いを感じました。

 なお、国立科学博物館では、「日本の自然を世界に開いたシーボルト」(2016年9月13日―12月4日)企画展が、開催されています。こちらでは、シーボルトのおし葉や動物の標本がみられました。シーボルトの秋を感じています。
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