キトロロギストXの記録
激しく変化する昨今のもとで一生をカンキツ研究に捧げてきた老学者の独白を広く一般のカンキツ愛好家(キトロロマニア)に聞いていただきたくブログを開設しました。お閑な時にどうぞ目を通してください。
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早生温州果肉の側壁膜の解剖
sokuhewase果実

 10月に入って、早生温州の出荷が始まりました。早生温州には、宮川早生、興津早生、原口早生、田口早生など多くの系統品種があります。ハウスみかんの多くは、宮川早生を使って施設栽培されています。露地栽培の早生温州の側壁膜の解剖を試みました。

sokuhewase横断面
sokuhewase厚さ新

1 )袋の側壁膜の厚さ
 露地栽培の早生温州果実の側壁膜の厚さは、50から200マイクロメータ(μm)ほどあり、部位によってかなりの違いがありました。膜の周辺の縫合部で厚くなっていました。そして、ハウスみかんと同様に、5から15の棒状細胞の層からなっていました。

sokuhewase外層
sokuhewase内層2
sokuhewase細胞直径

2 )袋の側壁膜の構成細胞
 側壁膜は、直径が10-20 (μm)、長さが100-200μmの棒状の柔細胞で、すべて構成されていました。そして、側壁膜の外表皮側の外層の棒状細胞と、ベシクル側の内層の棒状細胞の違いは、やや内層の細胞が太く、短いものでした。細胞間隙はなく、すべての細胞が原形質と核を持っていました。

sokuhewase内層蝋

3 )袋の側壁膜からの分泌物
 側壁膜の外表皮から、脂肪物質のクチクラが層状に分泌していました。さらに、蝋物質(ワックス)を多く析出していて、内層や内表面に特に多く析出していました。内表面にはクチクラ層はみられませんでした。
 袋の側壁膜は、このような分泌物質と棒状細胞層で、ガスや液体の透過を許さない堅い膜となっていることが判明しました。これらの解剖観察の結果からは、銘柄産地の露地栽培の早生温州と、ハウス栽培の宮川早生の側壁膜の構造上の大きな違いを、指摘することはできませんでした。

sokuhewase鶴厚さ

4 )産地間の相違
 上のような観察結果は、和歌山県有田産のゆら早生や愛媛県宇和産の宇和のみかんから得られたもので、すべて袋ごと食べられる良品質の果実の所見でした。そこで、東京産の袋ごと食べにくい早生温州と比較しましたところ、側壁膜の厚さが2倍ほど厚いものでした。袋ごと食べられる厚さの限界は、100μm程度にあるように思われました。側壁膜の形態の産地間差異があることが、解剖所見として明らかでした。さらに、膜の硬さなどの違いを、検討する必要がありました。
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