キトロロギストXの記録
激しく変化する昨今のもとで一生をカンキツ研究に捧げてきた老学者の独白を広く一般のカンキツ愛好家(キトロロマニア)に聞いていただきたくブログを開設しました。お閑な時にどうぞ目を通してください。
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果肉の硬さを測る
 果肉の硬さを測るために、貫入抵抗値を求めようとしますと、針(圧子)の先端の太さ(面積)や、圧子が果肉をつき抜ける速さの違いが問題になります。このために、圧力が一定で動く動力計ダイナモメータ(dynamometer、 応力ニュートンN)を必要としますが、その貫入値を用いた圧子の面積で除した値を、硬度(N)としています。

koudo硬度計

 しかし、このような装置はポータブルでなく、高価なために、これまで多くの場合、市販の果実硬度計を使って、果肉の硬度として、データを相対的に比較してきました。果実硬度計は、一定面積の圧子(プランジャー)が数種類用意され、これらを果肉に突き刺した時の最大の圧力(kg)を求め、1平方センチメータ当たりに換算して(kg/cm2)、その値を便宜的に硬度としてきました。果実の種類ごとに、用いてきた測定器具(マグノスメラー、ユニバーサル硬度計、レオメータ、カードメータ、ペネトロメータなど)が異なるために、データの正確な比較は難しいのですが、とりあえずまとめてみました。

koudoスケール

1)果実種類間の果肉硬度の違い
 果樹産業では、消費者に食べごろの果実を届けるために、完熟果実になる前に収穫を行っています。収穫した果実は時間とともに必ず柔らかくなりますので、輸送日数などを考えて、収穫適期を求めてきました。そしてその際、果肉の硬度(種類によっては果実)が、収穫適期の目安を得る数値として測定され、利用されてきました。
 例えば、外観からは難しいキウイフルーツでは、硬度が1.5㎏程度で、リンゴふじでは、7㎏前後で収穫しています。収穫適期頃の硬度を果物ごとにみますと、果肉の硬度は10㎏/cm2以下にありまして、これ以上の硬さはヒトの口に合わないようです。また、最近は、食行動に世代間の差があるようで、若い世代には、3kg程度のはりのある果肉より、1kg以下のメルテイな食感が好まれるようになっています。

koudo低温効果

2)貯蔵果実の果肉硬度の変化
 収穫した果実は、時が経つにつれて柔らかくなりす。この軟化のスピードは、種類によって相当異なります。しかし、どの果実でも、低温で保つと、果肉の軟化を遅らせることができます。冷蔵庫に入れられる果実なら、軟化する前に0℃前後で保存できますし、冷蔵庫に入れられない、熱帯果実やキウリなどチリング傷害の恐れのある果実は、8℃前後で保存しています。
 普通、冷蔵後の果実を常温に移した場合、果肉の軟化はより速やかに始まります。軟化の難しい西洋ナシの場合、10日ほど低温貯蔵して置いたのち、室温に移して15日位に食べごろになります。その時の果肉硬度は、8㎏程度から1㎏程度に低下していました。

koudoプロトペクチン

3)果肉の軟化の生理的メカニズム
 果肉の軟化は、細胞壁膜の構成成分の生化学的な変化で起こります。すべての果物で、同じようなメカニズムで軟化が起こっているのではありません。しかし、これまでの研究で最も注目されてきたのは、ペクチンの変化でした。ペクチンは、ガラクツロン酸を基本単位とした、長鎖の5-20万分子量を持つ多糖類です。果実が若い時には、ペクチンはカルシウムや糖やセルロースなどと結合していて、水に溶け出さないプロトペクチンとなっているのですが、成熟してくるとプロトペクチンが、酵素作用で水溶性のペクチニン酸に変化します。
 このペクチンの低分子化を進めるプロセスは、成熟ホルモンのエチレンが細胞壁膜と接触することで、ポリガラクツロン酸酵素などいくつかの酵素の活性が高まるためでした。このような膜構造の変性メカニズムは、エチレン感受性の果物に共通していました。
 
koudo酵素

 果肉の硬度測定は、マーケットを有利に進める指標を得るための、収穫適期の判定に役立つばかりでなく、ポストハーベスト終期のモニタリングにも貢献します。さらに、育種選抜の一形質として、データを利用できます。これからは、汎用な硬度計の普及と、果物共通の硬度測定法の開発が望まれます。

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