キトロロギストXの記録
激しく変化する昨今のもとで一生をカンキツ研究に捧げてきた老学者の独白を広く一般のカンキツ愛好家(キトロロマニア)に聞いていただきたくブログを開設しました。お閑な時にどうぞ目を通してください。
201708<<123456789101112131415161718192021222324252627282930>>201710
アメリカのカンキツ生産が危ない
naftaレイクアルフレッド

 アメリカのカンキツ生産量が、ここ10年来急速に低下しています。とくに、生産の中心であるフロリダが大変で、2016年産のオレンジが14%、グレープフルーツが11%も去年よりダウンしました。フロリダ州の約1.5%にあたる3200へクタールのカンキツ園が、各所で荒廃しつつあるのです。衛星写真からも、カンキツ園の荒れた様子がうかがえます。アメリカのカンキツは、自国民の栄養に貢献しているばかりでなく、カナダや日本などのマーケットにも大量の輸出をしていますので、他人事ではありません。何が、世界のリーダーをダメにしているのか、その理由について検討してみました。

naftaアメリカ生産
naftaミカンキジラミ

1)カンキツのグリーニング病を未だ克服していません
 カンキツのグリーンニング病はバクテリア(Candidatus Liberibacter spp.)の感染でおこり、ミカンキジラミが媒介してうつるか、接ぎ木で感染する病気です。1919年に中国南部で発見され、1928年には南アフリカで被害をもたらしました。アジアでは、1943年に中国で、1960年にタイで確認されて、瞬くうちに日本を除くアジアのカンキツに、壊滅的被害をもたらしました。アメリカには、ミカンキジラミが1998年に確認され、2005年にグリーニング病がフロリダで発生しました。20014年には、急激な感染拡大がみられ、荒廃園の多いこともあって感染源が広がり、とくにフロリダでは危機的状態になってきました。
 感染しますと、細菌が維管束の師部に詰まり、転流阻害のために栄養が行き渡らなくなって枯死します。現在,木を伐採して園地から取り除くしか対策がありません。世界的に治癒対策が研究されているところです。幸い日本には、沖縄までしかキジラミや病害樹の存在が知られていませんので、被害を免れているところです。先進国のアメリカでさえ押さえきれていないほど、カンキツ産業を衰退させる怖い病気です。

nafta金額バランス
naftaオレンジ

2)カンキツ貿易による外圧に負けそうです
 アメリカの生鮮食料の貿易バランスが、最近、急激にマイナスに転じています。2015年度は176億ドルの輸入に対して、63億ドルの輸出金額でした。輸入金額の最大はメキシコで、40%程度を占めました。メキシコは、1994年から、カナダ、USAと北米自由貿易協定(NAFTA)を締結し、域内3億6000万人の胃袋と直結した農産地になりました。しかし、メキシコのトウモロコシ、小麦、コメ産業は、アメリカの大農方式には比べられないほど弱く、自給を満たすのに精いっぱいの状態です。一方、中南米の協力もあってか、生鮮食料の輸出は順調で、メキシコ国土の農業土地利用が、急速に伸びてきました。
 このところのメキシコのカンキツ生産量をみますと、その急激な伸びが知られます。まもなく、カナダの輸入元を支えてきた北米のカンキツ生産事情は、メキシコ産柑橘に転じるのではと思われます。フロリダのカンキツ農業の姿は、トランプさんのメキシコの壁の心情にも、関わっているのでしょうか。

nafta加州生産

3)異常気象への対応がままなりません
 USAカンキツ生産の第2位を占めているカリフォルニア州は、とくに最大のサンジョアキン産地を中心に、ミカンキジラミの拡散を防除しているために、フロリダほどのグリーニング病被害を受けていません。しかし、たびたび報道されていますように、多雨や干ばつ、冬季の低温など異常気象の災害が頻発して、加州のカンキツ生産を不安定にしています。さらに、灌水のための水不足と水価格の高騰や、収穫などの人手不足と高い賃金が、カンキツ経営を苦しめています。
 
 naftaオレンジ輸入
 naftaレモン輸入

 加州は長い間、日本やカナダなどのオレンジ、レモンのマーケットを賄ってきました。はたして、この地の競争力をこれからも維持できるかどうか、これからが大変なことでしょう。日本のカンキツ産業も対岸の火ではいられないようです。

過去関連記事:アメリカのカンキツ栽培の動向:09/11/10 
スポンサーサイト
ランキングに参加しています。良かったら押してください。

FC2Blog Ranking

にほんブログ村 グルメブログ フルーツへ
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する

管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
copyright © 2004-2005 Powered By FC2ブログ allrights reserved.