キトロロギストXの記録
激しく変化する昨今のもとで一生をカンキツ研究に捧げてきた老学者の独白を広く一般のカンキツ愛好家(キトロロマニア)に聞いていただきたくブログを開設しました。お閑な時にどうぞ目を通してください。
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カンキツ「肥の豊」の果実側壁膜の硬さを測る
hinoyu収量変遷

 熊本県特産の肥の豊は、デコポン(正式名、不知火)にマーコットを交配して播種した実生の中から選抜された、デコポンの珠心胚突然変異系統として、2000年に品種登録されました。デコポンより樹勢が強く、高糖度で低酸味の優良系統として急激に生産が伸びてきました。3月に果実が手に入りましたので、この品種の側壁膜の特徴を調べてみました。

hinoyu硬度比較

1)側壁膜の硬度の差異 
 果実側壁膜の硬度は、1.74㎏/cm2で、比較のためのデコポンの1.99㎏よりやや低いものでした。袋ごと食べるにはやや難がありました。側壁膜がとくに基底部で破れやすく、また、融合袋も多くみられました。

hinoyu形質相関

2) 側壁膜の硬度と果実形質との相関
 側壁膜の硬度と、果実の形質(果重、果形、果皮重、果肉重、室数、袋重、油胞数などの諸形質)との関係をみますと、すべての形質との相関係数は低く、硬度は、独立した計測値でした。果皮の油胞密度はデコポンとかわらず、油胞が極めて多くありました。

hinoyu解剖相関
hinoyu細胞比較

3)側壁膜の硬度と側壁膜組織構造との相関
 また、側壁膜の硬度と、側壁膜の棒状細胞の幅、側壁膜の厚さとの関係をみましたところ、硬度は、棒状細胞の幅や側壁膜の厚さとの間に、相関関係にないことが分かりました。肥の豊の側壁膜の厚さ、棒状細胞の幅は、デコポンのそれよりやや大きいことが分かりました。細胞壁は両者とも肥厚が顕著でした。側壁膜の硬さは、構成細胞の棒状細胞の膜の厚さや強さ、さらには、細胞同士の接着の強さに左右されているものと思われます。

hinoyuでこ肥豊

4)ベシクルの大きさ
 肥の豊のベシクルは、デコポンのそれより明らかに大きいものでした。このことから、肥の豊の果肉は、デコポンよりより狭い細胞膜の面積となっているので、口内での砕け易さ、粘着性、喉ごし性などが、デコポンより優れていると思われました。

 みかんの興津早生が、宮川早生の珠心胚実生突然変異系統として生まれ、生産増強に貢献したことはよく知られた農水省の研究成果の一つです。同様の育種方法で生まれた熊本県の「肥の豊」は、上の解剖結果からデコポンの早生系統のようにみられますので、鹿児島県のデコポン枝変わりの「大将季」とともに、不知火軍団としてデコポン列島をより豊かにすることでしょう。
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