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キトロロギストXの記録
激しく変化する昨今のもとで一生をカンキツ研究に捧げてきた老学者の独白を広く一般のカンキツ愛好家(キトロロマニア)に聞いていただきたくブログを開設しました。お閑な時にどうぞ目を通してください。
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みかん果実の果盤の解剖
kaban-花盤縦

 果実は果柄(果梗)とともに結実します。両者の間には、通称ヘタと呼ばれる果盤があります。果盤は花の時の花托とガク片と花盤の合体したものです。カンキツ以外の果実には、ヘタに花盤はありません。みかんのヘタの組織分化がどのようになっているか、解剖しました。そして、花盤の分化の意義について、考察しました。

kaban果実花盤

1) 果実からヘタへ、そして果柄への維管束連絡
 果実の維管束走行については、先に説明しましたように(ブログ記事;カンキツ果実の維管束の組織学;18/01/23)、3種の幹線が張り巡らされていて、果実を養育しています。これらは袋数だけセットされていますので、少なくとも30本以上の維管束がヘタを通過することになります。しかし実際は、これらの散在維管束は、ヘタの花盤部で袋数10本だけに集合し、サークル状に配列していました。

kaban花托果梗

 そして、ヘタの花托部に入りますと、維管束内、維管束間を結ぶように形成層がリング状に現れ、2次成長がみられるようになりました。果柄部では、形成層リングが内部に木部を外輪部に師部を分化して2次維管束の茎を形成しました。

kaban-果柄

 このように、みかんのヘタ内の花盤部は、果実の散在1次維管束の集合部位であります。また、花盤の下底部位には離層組織が分化していて、果実の離脱と関わっています。花盤のないブドウでは、果実の1次離生維管束はすべてがヘタの花托部でサークル状に配列し、果柄部で、形成層が2次維管束を分化していました。離層は、花托の下底部位と果柄の基部にみられました。
 
2) 果盤の離脱
 果実は、ヘタをつけた状態で収穫されます。へたのない果実はへた落ち果とよばれ、商品価値が低下します。ヘタ落ちの難易度として、みかんなどのマンダリンを含む後生柑橘はへた落ちしにくく、流通の多いオレンジ、レモン、グレープフルーツなどの初生柑橘はへた落ちしやすい傾向がみられます。
 果実貿易上、ヘタ落ちしにくくするために、2,4-Dや2,4,5-T などの100ppm程度の希溶液のヘタ処理が行われています。果実の老化の過程では、成長促進物質の低下は避けられません。その点、みかんのヘタにはIAA(インドール酢酸)やGAs(ジベレリン)などの成長促進物質が、高い濃度でより長く保たれ、ヘタ落ちをおさえているものと思われました。

kaban-ヤンサイクル

 ヘタ落ちは、ヘタの花盤部の離層細胞が、老化ホルモンのエチレンガスに感受して、細胞解離するためです。エチレンの生成経路はあきらかになっていて、アミノ酸の一種のメチオニンがSAM(Sアデノシルメチオニン)に、さらに、ACC(1-―アミノシクロプロパン―1-カルボン酸)となり、エチレンが生成します。そして、SAM→ACCにはACC合成酵素が、ACC-→エチレンにはエチレン生成酵素が作用しています。
 また、それぞれの酵素生成の遺伝子(ACSgenesとACOgenes)が、すでに同定されています。みかんのヘタには, 成長抑制物質の植物ホルモンであるABA(アブシジン酸)の濃度が高く、ABAはACCの生成を促進しています。したがって、亜熱帯から熱帯に分布する初生柑橘と,温帯に分布する後生柑橘では、ACC→エチレンのACO遺伝子の発現が、相違しているものと推定できました。

 一般の果実では、花の時の蜜腺は組織離脱や壊死崩壊してみられなくなります。しかし、みかんでは、花の花盤がはっきりと果盤に組み込まれて、ヘタの一部として重要な役割を果たしていました。その1つは、果実の分散している1次維管束を束ねる役割であり、その2つは、果実の離脱可否の役割でした。みかん特有の花盤は、花の時の蜜腺として蜂との関りだけでなく、果実にとっても重要な役割を持っていました。

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